20. 地磁気異常ってなに?

異常と聞けば、ただならぬ印象を受けるかも知れません。異常というのは標準からの「ずれ」のことです。

地磁気は、おおまかには、地球の中心に棒磁石があるような分布をしていますが、一つの棒磁石で完全にその全体分布を表すことはできません。そこで、複雑な地球磁場の分布を、ガウスが発明した球関数展開という数学的な方法でモデル化することが行われています。モデルの作成のもとになるのは、世界各地の地磁気観測所のデータですが、最近は人工衛星による観測データも組み込まれます。

海洋底の拡大に伴う地磁気異常。中央の海底の盛り上がり(中央海嶺と呼ばれます)で新しい海底ができ、左右対称に拡大します。海嶺から遠い海底ほど古い時代にできたもので、海底の岩石はその当時の磁場の情報を保存しています。図では黒が現在と同じ向きに磁化している場合で、逆向きの場合は白です。

地球磁場の時間的変動も考慮するため、このような地磁気のモデルは10年に1度の割合で作成されています。これを標準磁場と呼びます。標準磁場は、空間スケールで、およそ1000キロメートルよりも大きな広がりを持った地球磁場の空間分布を表現しています。

地球表面で地磁気の分布を詳しく測定すると、この標準磁場では表わすことのできないほど、細かなスケールで空間的に変化している様子もわかります。通常は地殻の岩石の磁化による、標準磁場からのずれを地磁気異常と呼びますが、次項の「ブラジル異常」のような例外もあります。

火山は、顕著な地磁気異常をつくることで知られています。また、海洋底には、海洋底拡大の跡を示す縞状の磁気異常も見られます。