41. 地磁気の観測で噴火を予知できる?

前項で述べたように、マグマが地表近くまで移動してきて周辺の岩体を熱すると磁場の変化をもたらすので、地磁気の観測は噴火の予知に有力な手段とされています。実際にいくつかの火山では噴火の前に地磁気が変化して、噴火の予測に役だった例があります。一つの火山で火口を取り囲むように複数の場所で地磁気の観測を行うと、検知された地磁気変化の原因が、岩体の磁気が部分的に消失したのか、それとも逆に増大したのかを推定することができます。部分的に消失したのであれば、その部分の温度が上昇したことを意味します。

熱せられたマグマ周辺の岩盤が磁性を失うのを、地表の磁力計による観測で検知することができます。

火山噴火の予知には、地震計や、地盤の傾きや伸び縮みを正確に測定する装置、温度計など、さまざまな観測手段が用いられます。マグマが移動してくると、周辺の岩盤を加熱するので、温度測定による方法は非常に直接的に思えます。しかし、地下で岩盤の温度変化があったとしても、それが地表に伝わるのには時間がかかります。地磁気測定による方法の利点は、温度変化によって地下の岩体の磁性が変化すると、それが時間の遅れなしで地表で観測される磁場変化をもたらすことです。地磁気を変化させる要因は他にもいろいろありますので、それらを正確に区別しなければならないという問題はありますが、日本の噴火予知計画でも、地磁気観測は有力な方法の一つとして実施されています。