34. 宇宙線で惑星の水探索ができる?

もう一つ、宇宙線が役立つ例を紹介します。

月面や火星に水が存在するかどうかは重要な問題です。火星に人工衛星を軟着陸させるのは、なかなか難しいようですが、軟着陸させなくても上空から調べる方法があります。火星には大昔、海があったといわれています。この時の水分は土の中に浸透し、氷となって残っていると考えられます。月でも極地には、水が太陽光で暖められて飛んでしまわずに、土の中に存在しているのではないかといわれています。30年後に月面基地で人類が活躍する頃、こういう水は貴重な存在になるはずです。

水があるかないかは、宇宙線のヘリウム原子核の反応を利用するか、陽子の散乱を見ればわかるのです。宇宙線中の最も頻度の高い陽子は、土の中50cm位は侵入できます。水があれば、水分子(H2O)中の水素(H2)の原子核と弾性散乱して、陽子が後方にどんどん跳ね返ってくるのです。丁度玉突きと同じ原理です。水分子がなければ反射してくる陽子は少なくなり、比較することで水の存在がわかります。このように、宇宙線は非常に有効な使い方があるのです。