19. どのくらいのエネルギーの粒子が存在する?

アインシュタインの特殊相対性理論によると、電子の持っているエネルギー(静止エネルギー)は約500 keV*。eV(電子ボルト)とは、粒子のエネルギーの単位で、1 eV の粒子が約 10000 度の温度に対応します。

放射線帯の中には、数百keV 以上のエネルギーを持つ電子(相対論的電子と呼ばれています)が大量に存在します。現在のところ、エネルギーが数十 MeV *に達する電子と、数百 MeV に達するイオンが、放射線帯に存在していることが観測されています。 このうち電子は、20 で説明するように、磁場の強いところに粒子が輸送された結果、エネルギーが高くなったのだとされています。

アインシュタイン

相対性理論の発見をはじめ、いくつもの物理学上の重要な発見を成し遂げた研究者。

光のスピードに近いような粒子の運動は、アインシュタインの相対性理論を使うことで、正確に理解することができます。放射線帯の粒子の運動を理解していく上で、相対性理論は欠かせません。

いろいろなエネルギーごとの放射線帯電子の量が、地球からの距離でどのように変わるのかを表わしています(NASA の経験モデル“AE8-MAX”による)。

一方、数十 MeV 以上の陽子は、宇宙線が地球の大気に衝突して 2 次的な荷電粒子を放出するプロセス(CRAND: Cosmic Ray Albedo Neutron Decay と呼ばれます)によって、エネルギーの高いイオンが放出され、地球の磁場に捕らえられてできたと考えられます。

エネルギーが高くなるにしたがって、粒子の数は少なくなっていくこともわかっています。

* keV(キロ電子ボルト)、MeV ( メガ電子ボルト): キロは 1000 倍、メガは100 万倍を意味する言葉です。