29. 放射線帯の電子が減るしくみは?

磁気嵐が起きると、その主相と呼ばれる期間に、放射線帯の外 帯の電子が減少することはお話ししました。しかし、なぜこのような減少が起きるのかは、まだきちんとわかっていません。現在、 減るメカニズムとして、次の 3 つが有力候補と考えられています。

  1. もともと放射線帯にあった粒子が、磁気嵐が起きると磁気圏の外に逃げ出してしまう。
  2. 磁気嵐が起きると強いプラズマ波動が発生し、もともと放射線帯にあった粒子が、プラズマ波動と相互作用することで大気に落下してしまう(30 参照)。
  3. 磁気嵐が起きると、内部磁気圏の磁場の強さが減少し、その減少にあわせて(20で紹介したように、磁場の強さと粒子のエネルギーには密接な関係があります)、粒子のエネル ギーも減ってしまう。

①と②については、実際に逃げ出していく、あるいは落下して いく粒子の観測がまだ不十分なため、どちらのメカニズムが、ど のように粒子の消失に作用しているのかはよくわかっていません。

③のプロセスは、実際に磁気嵐のときに粒子を減らしています が、このプロセスの場合、磁気嵐が終わると粒子の数はもとに戻るはずです。しかし、磁気嵐が終わっても、粒子の数がもとに戻 らない例がいくつもあるので、③のプロセスだけでは不十分だと 考えられているのです。

放射線帯の電子が減るしくみについては、どうして増加するのかという問題とならんで、未解明の大切な問題として盛んに研究 が行われています。