19. 暗い太陽のパラドックス?

哲学や科学には、「そんなばかな」と言いたくなる様なパラドックスと呼ばれる変な話がいろいろあります。有名なものとしては、「アキレスと亀」のゼノンのパラドックス、「クレタ人はうそつきだ」のエピメニデスのパラドックス、「夜空はなぜ暗い」のオルバースのパラドックスなどです。地球惑星科学では、有名な暗い太陽のパラドックスというのがあります。間違い探しをしてみましょう。

46億年前に誕生した地球には、その後生命が誕生します。この時期は、遅くとも35億年前であることが、地質学的な研究からわかっています。この時期地球はどの様な環境だったのでしょうか?温暖だったのでしょうか?それとも寒冷だったのでしょうか?

ヒントとなるのは、誕生直後の太陽の明るさがどのくらいだったかということです。太陽が輝いているのは、中心付近の核融合反応で大量の熱が生成されているからです。太陽で核融合反応がどの様に進行するかは、詳しい理論的な研究が行われ、標準太陽模型と呼ばれる理論が確立しています。この理論は、同じような他の恒星の観測とも良く合うことから、ほぼ正しいと考えられています。この理論によれば、誕生直後の太陽は、現在より20 %くらい暗く、地球上の温度は非常に低く地球は氷で覆われていたはずです。生命の誕生どころではありません。ところが、地質学的には、今から38億年前にはすでに液体の水でできた海が存在していたという証拠があります。「そんなばかな..」ですよね。どこが間違っているのでしょうか?

この問題については、様々な仮説が提唱されました。今のところ当時の地球大気には二酸化炭素などの温暖化ガスが大量に含まれていて、その温室効果で温暖な気候だったとする説が有力です。