42. もし太陽風がなかったら?

30 で銀河宇宙線について説明しましたね。銀河宇宙線は生命にとって有害で、生物がたくさん浴びると、癌や遺伝子の異常、死に至る危険さえあります。太陽風は、この銀河宇宙線が地球にたくさん降り注ぐのを防ぐ、バリアの役目を果たしているのです。ここで重要なのが、太陽風が持つ磁気の力、つまり磁場です。磁場は、電気を帯びた粒子の進行方向を曲げる作用があります。銀河宇宙線の大半は電気を帯びているため、太陽風の中に入ろうとすると磁場の力が働き、うまく進入することができません。太陽風の他に、地球の磁場や大気も、銀河宇宙線を防ぐバリアの役目を果たします。

太陽風が防いでいるものには、もう 1 つあります。それは、恒星と恒星の間に漂う星間空間ガス。星間空間ガスは、太陽風の流れによってせき止められ、地球に直接吹きつけることはありません。星間空間ガスと太陽風の境目は、太陽と地球の距離(1 億5000 万 km)の約 100 倍ぐらいのところにあると考えられています。現在、太陽は星間ガスの希薄なところにいますが、いずれは、もっと星間ガスの濃いところに入っていくでしょう。このとき、太陽圏はぐっと縮められ、地球の位置あたりが境目になるだろうと予想されています。そうなると、地球は銀河宇宙線や星間空間ガスに直接さらされ、環境は大きくかわってしまうでしょう。