18. どうして短波通信が突然途絶えるの?

電離圏の変動は、電離圏嵐だけではありません。もっと直接的に、太陽フレアに関連して、電離圏の状態が大きく変化することがあります。電離圏は、中性大気が電離してできているので、電離を引きおこす紫外線やX線の強さが変わると、変化してしまうのです。

大きな太陽フレアで強いX線が地球に降り注ぐと、太陽を向いた面、つまり昼の時間帯にある地域では、急激に電離圏の電離が進みます。電離圏の一番低い高度の電子密度が大きくふえると、短波は電離圏で吸収されて反射できなくなるため、短波通信ができなくなる「デリンジャー現象」が発生します。

デリンジャー現象は昼しかおきませんが、極地方では昼・夜に関係なく同じような現象がおきることがあります。太陽フレアのときに発生する太陽高エネルギー粒子(第16問参照)が、極地方の電離圏に集中して飛び込んでくることが原因で発生し、「極冠吸収」と呼ばれています。

極冠吸収は、特に極地方を飛ぶ航空機の通信に深刻な影響を及ぼします。極冠吸収の影響が深刻な場合は、ふだんは高緯度地方の航路を飛んでいる飛行機が、影響を避けるために安全に通信できる低緯度の航路に変更することもあるのです。