25. 大気の摩擦で衛星が落ちるのはなぜ?

衛星が飛ぶ地上から高度400kmの間の大気はとても薄いため、衛星が受ける摩擦はほとんどありません。しかし、宇宙嵐のときには大気が加熱され、ふだんより高い高度でも大気の密度が濃くなります。このため、衛星が飛んでいる高度でも摩擦が大きくなります。摩擦によって衛星の姿勢が大きく変化すると、衛星の太陽電池に太陽の光が十分にあたらないこともおこります。大気の摩擦がなければ、重力と遠心力とのつりあいで人工衛星は同じところを回り続けるはずですが、摩擦が増えると衛星の軌道は下がって落ちてきます。高度が低いほど大気の密度が高くなりますので、摩擦がさらに増加し、ついには摩擦熱によって衛星が燃えてしまうこともあるのです。

日本のX線天文衛星「あすか」が、2000年7月の大磁気嵐(1789年7月14日のフランス革命の引き金となったバスチーユ襲撃事件と同じ日付であったことから、バスチーユイベントと呼ばれています)のときに姿勢が不安定となり、翌年の3月に大気に落下しました。これは、大磁気嵐に伴って大気が急激に膨張したために、「あすか」と大気との摩擦が予想外に強くなったことと関係があると考えられています。