40.光を使って大気のてっぺんを調べる?

17-22 で述べたように、大気のてっぺんは大気光と呼ばれる目に見えないくらい弱い光を出しています。この光を高感度の機器で測ることにより、中間圏や熱圏、電離圏を調べることができます。1990 年代に開発された冷却 CCD*素子は非常に感度が高くて、これまで目に見えなかった大気光のイメージ画像を取得することが可能になりました。この冷却 CCD カメラを使い、大気のてっぺんで起きている大気重力波やプラズマバブルなどの乱れが目に見えるようになってきて、この分野の科学は革新的に進んでいます。

さらに大気光は、決まった波長で光っています。大気のてっぺんで風が吹いていると、ドップラー効果と呼ばれる効果でこの波長が少しずれてきます。この波長のずれを地上から精密に測定することにより、大気光が光っている高さでの風速や温度も測定することができます。こういった光を使って大気のてっぺんを調べる方法は、他の手法と比べて安価で簡単に行うことができるので、利用価値が高いのです。

* CCD とは、Charge Coupled Device の略で、人間の目で言えば網膜にあたる部分です。レンズを通して入ってきた光を電気信号に変換することができ、現在では、ディジタルカメラやビデオなどに広く使われています。冷却 CCD 素子は、このCCD をマイナス50 度以下に冷やすことによって、装置のノイズを非常に低くして、暗い光もキャッチできるようにしています。

大気光を通して観測した中間圏の大気重力波の画像。特に左下の部分に南西から北東方向に波面を持つ大気重力波が見える。白い点は星。