50.大気のてっぺんには人が住んでいる?

熱圏の高さを飛んでいるのは、人工衛星だけではありません。人間が搭乗しているスペースシャトルや国際宇宙ステーションも同じです。これまで述べてきたような通信障害や衛星寿命の問題は、こういった有人飛行においても重要だとすぐに想像がつきますね。将来、スペースコロニー(宇宙植民地)などで人類が宇宙に踏み出す時、最初はこの熱圏の高さで地球を周回する巨大な衛星に住むと考えられます。そのような時代には、ある時は衛星の窓の外を巨大なプラズマバブルが横切ったり、眼下にオーロラが過ぎていくのを眺めたり…。中間圏・熱圏や電離圏の科学は、今よりももっともっと身近な科学になっていることでしょう。

インドネシアでの大気光観測カメラの設置風景
名古屋大学太陽地球環境研究所(現宇宙地球環境研究所)。
北海道陸別観測所で、磁気嵐中にとらえられた大気のてっぺんの津波(大規模伝搬性電離圏擾乱じょうらん)。大気光の明るい部分が北から南に伝わっていくのがわかる(名古屋大学宇宙地球環境研究所)。