29.太陽風は地球にどんな影響を及ぼすの?

太陽風は、秒速数百キロメートルというとてつもなく速いスピードで地球に吹きつけています。このような超高速の太陽風が地球に激突すると、いったいどのようなことが起こるのでしょうか?時速数十キロメートルの車と衝突しただけでも酷い事故が起きるのに、その1万倍以上の速度の太陽風が常に地球に激突しているなんて、想像しただけで恐ろしくなってしまいます。

しかしご安心下さい。実は、太陽風は地球には直接激突していないのです。地球は大きな磁石に例えられますように、立派な強い磁場をもっています。この磁場が、太陽風の危険な粒子から、地球を守ってくれているのです。電気を帯びた粒子(プラズマ)で構成される太陽風は、地球の磁場によって地球の手前でせき止められています。

しかし、残念ながら、この地球の磁場による防御は完全ではありません。太陽風の危険な粒子の一部分は、地球の磁場の勢力範囲(地球磁気圏といいます)に入り込み、磁場を乱したり、地球の上空に降り注いだりします。この磁場の乱れによって、通信障害や送電線の遮断など、地球上でさまざまな影響が出るのです。幸か不幸か、人類は磁場の乱れを感じとることができません。イルカや鳩などの動物は磁場の乱れを敏感に感じとり、移動に混乱が生じたりするのに、人類はほとんど何も感じとることができないのです。異常事態が生じているのに何も感じとれないというのは、ある意味で危険な状態と言えます。

けれども、(鈍感な)人類が知覚できる磁気圏現象も存在しています。それはオーロラです。人類は、高緯度地方の上空に描き出される美しいオーロラの光のカーテンの舞いを、直接目で見ることが出来ます。オーロラは、地球の磁場に沿って流れ込んできた高エネルギーのプラズマ粒子が、地球の大気と衝突することによって上空100~500キロメートルの高度域で発光現象を引き起こすことで生じる現象です。

ハッブル望遠鏡で撮影した土星のオーロラ

このように、オーロラの発生には磁場と大気の存在が必要です。木星や土星も、強い磁場と十分な大気をもつ惑星ですので、地球と同じようにオーロラの出現が期待できます。実際に、ボイジャー探査機やハッブル望遠鏡によってオーロラの発生が確認されています。