35.太陽風に大気がはぎとられるってどういうこと?

惑星の上空は宇宙空間とつながっているので、大気の一部分が惑星の重力を振り切って宇宙空間に流れ出す現象が起こります。そのように流れ出す大気の中には、太陽風の影響によってはぎとられるものも多く存在するのです。太陽風のはぎとりの効果は、地球のように磁場をもつ惑星でもありますが、金星など磁場のバリアをもたない惑星では、超高速の太陽風が地表近くにまで直接吹き流れ、大気の底深くまではぎとりの効果を及ぼし、多量の大気構成要素を宇宙空間に持ち去っていきます。

火星も金星と同じく、全体的な強い磁場をほとんど持っていません。火星は誕生してからしばらくの間(10億年ほど)は、強い磁場をもっていたと推測されていますが、その後失われてしまいました。火星の磁場が失われてから現在までの35億年の間に、太陽風によって持ち去られた水の量は、惑星表面を数十メートルの海でおおうほどの量にも達するという予想がなされています。もしその大量の水が液体として存在していたとすると、過去の火星には生命体がいたのではないかという期待が高まります。

火星表面に見られる筋状の模様。過去に水が流れていた跡の可能性があります。