大学院受験を目指す方へ

CR研は名古屋大学宇宙地球環境研究所宇宙線研究部の略称です。名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻の大学院入学試験に合格することでCR研での研究に参加することができます。

博士課程前期(修士課程)の入試は7月中旬に実施される自己推薦入試と、8月末から9月始めに実施される一般入試の二種類があります。6月中旬には(28年は6月18日(土))入試説明会と研究室の一斉説明会があります。受験希望の方は自己推薦・一般に関わらず参加可能です。一斉説明会以外の日でもCR研の研究室訪問は随時歓迎ですが、必ず事前に連絡をしてからお越し下さい。

入試システムの詳細は宇宙地球環境研究所ウェブページとその先の素粒子宇宙物理学専攻のリンクもご覧ください。

CR研では、幅広い興味を持ち、やる気のある大学院生を募集しています

私達宇宙線研究室は50年以上の長い歴史がありますが、最先端のテーマを追う若い学生で活気が満ちています。自分で検出器を作って自分で動かす、ハード、ソフトの両面に強い学生を育てることが教育方針です。卒業生は企業や研究機関へ就職後、非常に役に立つ知識と技術を本研究室で習得することができます。

LHCf実験の検出器組み立ての様子 1.8 m MOA望遠鏡(ニュージーランド)

宇宙線 -cosmic rays-

宇宙線は英語でcosmic raysと言われます。私達の研究グループの略称CRはこの頭文字をとっています。宇宙線は、宇宙から地球に降り注いでいる自然の放射線で、Hessは1911年にこれを発見し、1936年にノーベル物理学賞を受賞しました。宇宙線は天然の素粒子実験場であり、また宇宙の高エネルギー現象について情報をもたらします。また、磁場に影響される宇宙線は太陽地球環境を調べるプローブにもなります。この様に宇宙線の研究は素粒子物理、宇宙物理から地球物理にまたがる幅の広い領域にまたがっており、我々の研究室にも様々な研究テーマがあります。以下に内容を紹介します。

研究内容

太陽粒子や宇宙線加速機構の研究

宇宙線は、陽子やヘリウム、鉄の原子核等が、「なんらかの」加速機構で、非常に高いエネルギーまで加速された粒子で、その起源は宇宙物理学上の大きな謎となっています。高エネルギー宇宙線やガンマ線の観測によりその起源を解明し、その加速機構を理解することが、宇宙線研究の主目的のひとつです。ガンマ線は、宇宙線と星間分子の相互作用で生成され、荷電粒子と異なり星間磁場で進行方向を曲げられることがないため、ガンマ線観測は宇宙線の加速現場を研究する有力な方法です。2008年に打ち上げられたフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡による10の9乗電子ボルトエネルギー帯のガンマ線観測により、W44、W51C、IC 443などの超新星残骸で、超新星爆発の衝撃波を受けている分子雲から宇宙線との相互作用によると考えられるガンマ線が検出されました。これらの観測で得られたスペクトル解析により、超新星残骸での宇宙線の加速および星間空間への放出過程についての新しい糸口をつかむことができました。

上述のような粒子加速は、宇宙のいたるところに存在するプラズマが起こす普遍的な現象で、地球近傍や太陽の表面でも、スケールこそ違え同様の現象が起こっています。太陽表面は我々に最も近い宇宙線源であり、太陽フレアと呼ばれる爆発現象に伴い粒子加速が起こっています。この時放出される太陽中性子を測定する事で、粒子加速の現場を捕らえる事ができます。現在、メキシコの高山に新たな太陽中性子検出器を設置する準備を進めています。

超高エネルギー宇宙線の謎を解明するLHCf実験

これまで最も高いエネルギーを持つ10の20乗電子ボルトの宇宙線が空気シャワーの観測から発見され、大きな謎を呼んでいます。これは人類が加速器で生成可能なエネルギーの何桁も上です。いったい宇宙のどこでこのような粒子が生まれているのでしょうか?

超高エネルギー宇宙線の観測では、宇宙線が大気中で反応して生成する2次粒子のシャワーを測定しています。しかし、超高エネルギーでの宇宙線の反応は実験データが無くよく分かっていません。 私達は2009年にいよいよ稼動を始めた世界最高エネルギーの陽子衝突型加速器、ラージハドロンコライダー(LHC)に小さな検出器を組み込み、超高エネルギー宇宙線の反応を実験的に調べる「LHCf実験」を行っています。ここで得られる素粒子実験データは、宇宙線観測の精度を上げ、加速器では実現不可能なもっと高いエネルギーの現象を宇宙線によって探る糸口となるでしょう。

地下実験でのニュートリノ観測と暗黒物質の探索

宇宙線は、未知の素粒子についてヒントをくれます。かつては陽電子、中間子の発見、最近ではニュートリノ質量の発見など、宇宙は天然の素粒子実験場で、まだまだ未知のヒントが眠っています。例えば宇宙の全質量の大部分は説明のつかない物質「暗黒物質」で担われていることがわかっています。地下千メートルの神岡鉱山は、通常の宇宙線がほとんど届かないため、希少な宇宙素粒子を探るのに最適な場所です。ニュートリノや暗黒物質の候補「超対称性粒子」は、ほとんど物質と反応しないため地下深くまで届きます。ニュートリノで宇宙を見れば、レントゲン撮影のように、他の物質のベールに隠されている現象、例えば太陽の中心で起こっている核融合や銀河の中心を見通す事ができるのです。私達はこの神岡鉱山にある巨大ニュートリノ実験スーパーカミオカンデに参加し、太陽や銀河中心に集積した暗黒物質が対消滅して作る高エネルギーニュートリノを探索しています。フェルミ衛星でも暗黒物質の対消滅で生成されるガンマ線を探索しており、これまでに3×10の10乗電子ボルト以下の質量を持つ暗黒物質の存在を否定することに成功しました。また液体キセノン検出器による暗黒物質探索、XMASS実験もいよいよ始まり、超対称性粒子が検出器を通り抜けた痕跡をつかもうとしています。私達は地下深くから宇宙を観測し、暗黒物質の正体を明らかにしたいと考えています。

重力レンズ効果による暗黒物質と太陽系外惑星の探索

我々の太陽系周辺や、銀河のハローには、核燃焼をすることのできない軽い天体(MACHO)が多数あり、銀河暗黒物質の候補のひとつです。自分では光らないこのような天体を検出する方法に重力レンズ法があります。視線上を暗天体が通過した時、その背景の天体が一瞬増光することを重力マイクロレンズ現象と呼びます。このような現象は百万個の星を毎晩観測して、見つかるのは年間1例程度です。私達は世界で最も南にあるニュージーランドのマウントジョン天文台に専用の1.8 m光学望遠鏡を日本から持ち込み、それに12 cm×10 cmの大面積CCDカメラを取り付け、重力マイクロレンズの観測を行っています。私達はこの手法を用いて、これまでにMACHO天体や太陽系外惑星の発見にも成功しました。毎年数個の系外惑星が見つかっており、その中には第二の地球があるかもしれません。

宇宙線と地球環境との関連の研究

太陽の放射強度はずっと安定ですが、その磁場活動は11年周期で変化し宇宙線強度に影響します。私達は樹齢2000年の屋久杉の年輪に含まれる放射性炭素14の濃度変化を測定し、宇宙線強度の履歴から過去の太陽活動の変動を復元する研究を行っています。この宇宙線の変動が地球の雲形成に影響している、という説があり、議論を呼んでいます。私達は実際に放射線によって雲核生成が増減するのか、確かめる実験を始めています。地球に降り注ぐ宇宙線は実は地球の気候や環境を左右しているかもしれません。