MOA実験の紹介
プロジェクト概要
MOAプロジェクトは、重力マイクロレンズ効果を利用し、通常は観測することができない暗い天体を観測し、宇宙の謎を解明することを目的とした日本・ニュージーランド共同プロジェクトです。暗い天体の候補としては、褐色矮星などのダークマター候補天体、太陽系外惑星、ブラックホールなどがあります。このプロジェクトは、1996年に開始し、ニュージーランド・マウントジョン天文台の61cm反射望遠鏡と、MOA-cam1, MOA-cam2と呼ばれる大型CCDカメラを使って観測を続けて来ました。その後、文部科学省・科学研究費補助金・特別推進研究が認められ、2004年12月に1.8m新望遠鏡(MOA-II)が完成し、観測を開始しました。左の写真は、MOA-II望遠鏡のドーム(ニュージーランド・マウントジョン天文台)。
観測は、ニュージーランド南島のほぼ中央にあるテカポという湖のそばにある、マウントジョン天文台で行われています。ここは、南極以外では世界でもっとも南にある天文台で、南緯44度です。このため、大小マゼラン雲は、1年中沈むことはありません。また、ニュージーランドの冬(6月,7月)は、夜の時間が長く、14時間もの連続観測が可能で、銀河中心(いて座の方向)の連続観測が可能です。
参加機関は、日本からは、名古屋大学太陽地球環境研究所、長野高等専門学校、都立航空高等専門学校、京都産業大学、ニュージーランドからは、オークランド大学、マッシー大学、ビクトリア大学、カンタベリー大学です。
ニュース
- 2011年5月19日発表:浮遊惑星という新たな系外惑星が多く存在しているこ とを発見
- 2011年1月8日発表:重力マイクロレンズ効果を利用したエリス・ワームホールの検証法
- 2008年2月15日発表:「小さな太陽系」発見
- 2006年1月26日発表:地球質量の5.5倍の低温の惑星の発見
重力マイクロレンズ効果
太陽や星、銀河など、大きな質量を持った天体の周りでは、その大きな重力によって空間が歪み、そこを通過する光は曲がって進むことが知られています。このことは、アインシュタインが一般相対性理論から予言したものであり、その後エディントンらによって、皆既日食中に太陽近傍の星がずれて見えることから、この理論の正しさが証明されました。
重力マイクロレンズ効果は、遠方の星(光源星と呼ぶ)の光が、前面を通過する星(レンズ天体)の重力レンズ効果で曲げられて集光され、一時的に明るく見える現象です。レンズ天体は、質量さえ持っていれば、それ自身が光を出さなくても、重力マイクロレンズ効果によって検出可能です。これを利用して、光をほとんど出さない暗い天体の存在を知ることができます。
サイエンス
この研究の目指すサイエンスは、銀河ハローに占める褐色矮星など通常の物質(バリオンと呼ばれる)の割合を決めること、太陽系外惑星の発見とその研究、ブラックホールや浮遊惑星などの存在の検証、などがあげられます。
- ダークマター
- 太陽系外惑星
- ブラックホール・浮遊惑星
観測機器
この観測には、広視野の光学望遠鏡が使われています。
研究成果
- マイクロレンズ探索
- 変光星
- トランジット探索
リンク
- MOAニュージーランド(英語)
- その他のマイクロレンズ研究プロジェクト