年輪中炭素14測定

放射性炭素(14C)による過去の太陽活動の復元

地球上の放射性炭素(14C)は宇宙線が地球大気中でつくったものです。屋久杉などの古い樹木年輪に含まれる14Cの濃度を過去に遡って測定することで,過去の宇宙線強度の変化がわかります。また地球に降り注ぐ宇宙線強度を制御している太陽活動の変動を知ることもできます。太陽活動は11年周期で変動していますが,昔はどうだったのでしょうか。  さらに宇宙線や太陽活動の変化と地球環境変動との関連も調べています。

研究の概要

 太陽活動の影響を受けながら地球へ到達する銀河宇宙線が,地球大気との反応で生成する放射性炭素(14C)を利用して,過去の宇宙線強度や太陽活動を知ることができます。我々は,古い樹木年輪中の放射性炭素を1-2年の分解能で測定し,過去3000年の太陽活動や宇宙環境の変動を知ることを目標としています。

研究の内容

 銀河宇宙から飛来する宇宙線粒子は,そのほとんどが陽子であり,正の電荷を持っています。一方太陽はダイナモ機構によって磁場を作り,その影響は太陽系を含む空間(太陽圏)に広く及んでいます。太陽圏における宇宙線強度は,太陽活動の強弱による惑星間空間磁場の変動によって変調を受けます。すなわち,太陽活動が活発なときは惑星間空間磁場が強くなり,その揺らぎも大きくなるので,宇宙線粒子が太陽圏に進入しにくくなり,地球へ到達する宇宙線強度が弱くなることになります。このように太陽活動の強さと宇宙線強度は逆相関の関係にあります。

屋久島の縄文杉

宇宙線粒子は地球大気に進入して大気原子核と衝突して反応を起こし,二次宇宙線を生成するとともに多くの放射性同位体をつくります。代表的な同位体は炭素14(放射性炭素),ベリリウム10などです。このうち炭素14は大気中の酸素と結合して二酸化炭素となり,安定な炭素同位体(炭素12,炭素13)から成る通常の二酸化炭素とともに地球大気内を循環します。その一部は光合成により樹木に取り込まれるので,毎年形成される樹木年輪にはその年の炭素14濃度が記録・保存されることになります。炭素14は5,730年の半減期で放射性崩壊するので,地球環境中の炭素14濃度はこの放射性崩壊と地球大気,生物,海洋などのリザーバーへの分配時定数に応じて平衡状態になります。太陽活動の変化などによって地球へ到達する宇宙線強度が変化すると,炭素14などの同位体生成率が変化し,各リザーバーにおける濃度も平衡状態からのずれを示します。炭素14の場合はその分配時定数の値のために,生成率の変動に対して対流圏下部(地表)における変動はかなり小さくなります。

 これまで米国・ヨーロッパを中心に年輪中炭素14濃度の10年値の変化が詳しく測定されており,その結果から,過去千年から一万年にわたってマウンダー極小期などの太陽活動の大きな変動がしばしば起こっていた可能性が指摘されてきました。我々は,このような太陽活動極小期が本当に起こっていたのかを確定し,その特性の詳細を調べるために,1年の時間分解能で太陽活動の変動を明らかにすることを目的としており,そのために屋久杉などの樹齢の長い樹木の年輪1年ごとの炭素14濃度を測定しています。

これまでの研究成果

C14濃度の変化

 我々のグループでは,これまでにマウンダー極小期(西暦1645-1715年)やシュペーラー極小期(西暦1416-1534年),さらに紀元前4世紀の極小期,などの太陽活動極小期を中心に炭素14濃度を調べてきました。その結果,現在平均11年周期で変動している太陽活動が,マウンダー極小期には14年周期で変動していたこと,紀元前4世紀の極小期では15-16年の周期で変動していたことを発見しました。一方シュペーラー極小期には11年周期であったことを確認し,極小期ごとにその特性が異なる可能性があることもわかってきました。このように過去の太陽活動は複雑な特徴を持っています。そこでさらに,これら二つの極小期以外の極小期の炭素14濃度を1年の時間分解能で測定し,その周期性を調べています。

今後の研究

  そこでさらに,これらの以外の太陽活動極小期の炭素14濃度を1年の時間分解能で測定し,その周期性を調べます。この太陽の基本的な変動要素(11年シュワーベ・サイクルや22年ヘール・サイクル)を調べることによって,太陽活動変動の原因を明らかにし,太陽活動の将来予測へつなげることをめざしています。