世界最大の太陽望遠鏡によって太陽フレア前兆現象の詳細観測に成功

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[2017-04-17]

本研究所長の草野完也教授が参加する米国、中国、日本の国際共同研究チームは、世界最大の太陽望遠鏡である米国ビッグ・ベア太陽観測所のニュー・ソーラー・テレスコープを用いて、太陽フレア爆発の前兆現象のこれまでにない詳細観測に成功しました。フレ発生機構の理解に大きな進展が期待できることから、新たなフレア発生予測につながる成果として注目されます。

 本研究は、ニュージャージー工科大学(米国)のハイミン・ワン (Haimin Wang)教授をリーダーとする米国、中国、日本の国際共同研究チームによって、世界最大の太陽観測望遠鏡である米国ビッグ・ベア太陽観測所のニュー・ソーラー・テレスコープ(New Solar Telescope)(口径1.6m)を使って大型フレアを観測することによって、大規模な太陽フレア爆発の発生前に小規模な発光現象が発生することを発見したものです。この研究ではさらに、フレア発生領域の磁場構造をこれまでにない高い精度で観測することによって、フレア前兆現象と考えられるこの小規模発光が太陽表面の磁場の極性が部分的に反転する特徴的な領域(反極性磁場領域)から発生することを突き止めました。この結果は、本研究チームにも参加している草野教授らが世界に先駆けて2012年に発表した「フレア・トリガ・モデル」に良く一致するものであり、フレア爆発の発生条件の解明につながる重要な研究成果と考えられます。

 太陽フレアは太陽黒点の周辺に蓄積された膨大な磁場のエネルギーが突発的に開放される現象で、X線や高エネルギー粒子、衝撃波を伴った高温プラズマの巨大な塊を宇宙空間に放出する太陽系最大の爆発現象です。その影響はしばしば地球にも及び、1989年には大型の太陽フレアによってカナダのケベック州で大規模停電が発生すると共に北アメリカ全域で様々な電力網の被害が発生しています。また、宇宙飛行士の被曝、人工衛星の故障や軌道の離脱、通信被害、航空機運行への影響なども発生しています。これらの被害を未然に防ぐためにはフレア爆発を事前に予測することが必要であり、日本をはじめ各国で宇宙天気予報と呼ばれる予測情報が日々公開されています。しかし、突発現象である大型太陽フレアの発生を正確に予測することは依然として困難であり、より正確なフレア発生予測の開発が望まれていました。

 本研究は、大型フレア爆発の前兆を初めて捉えると共に、太陽表面に現れる特徴的な磁場構造がフレア発生のトリガとして働くことを示すものであり、精密な太陽表面磁場の観測によってフレア発生を予測する新たな方法の開発につながる成果であると言えます。本研究成果の論文はNature Astronomy誌Webサイトにて2017年3月27日に下記の通り公開されています。

 また、本研究は文部科学省科学研究費補助金新学術領域「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成(領域代表:草野完也)」の支援も得て行われました。

 なお、この研究成果は毎日新聞、中日新聞、日本経済新聞をはじめ新聞各紙にも掲載されると共に、Yahooニュースなど各ニュースサイトでも取り上げられました。

 論文題目:High-resolution observations of flare precursors in the low solar atmosphere (太陽低高度大気におけるフレア前兆現象の高精度観測)

 著者:Haimin Wang, Chang Liu, Kwangsu Ahn, Yan Xu, Ju Jing, Na Deng, Nengyi Huang, Rui Liu, Kanya Kusano, Gregory D. Fleishman, Dale E. Gary, and Wenda Cao

 発表誌:Nature Astronomy 1, Article number: 0085 (2017)

 DOI: 10.1038/s41550-017-0085


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ビッグ・ベア太陽観測所(画像提供:New Jersey Institute of Technology)

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世界最大口径の太陽望遠鏡ニュー・ソーラー・テレスコープ(New Solar Telescope)
(画像提供:New Jersey Institute of Technology)

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