ふれあい 〜北欧スカンジナビア半島で津田卓雄が出会った〜 by Takuo Tsuda(写真右)

2004年12月、ノルウェーのトロムソにあるEISCATレーダーサイトに3週間ほど滞在しました。

アンドリュー(イギリス人の学生)

彼は、イギリスの特別実験を行うために来ており、EISCATレーダーのコントロールルームでご一緒した仲である。ぼそぼそとこもった感じでしゃべるので、英語の未熟な僕にとっては話を聞き取るのがかなり困難であった。

ある夜、観測中に野澤先生からリラックスタイムを頂いた僕は、外でオーロラを鑑賞していた。その日のオーロラはすこぶる元気で、僕はその美しさに魅了され、一人その場に立ち尽くしていた。すると、「ザクッ、ザクッ」と雪路を誰かが歩いてきた。誰かと思えばアンドリュー。一人で散歩していたようだ。彼は、無言で僕の隣に立ちオーロラを見始めた。 しばらくして、彼はオーロラについて僕に語りはじめた。まるで口説かれているようだ。幸か不幸か、やはり聞き取れない。氷点下の寒さとアンドリューへの一抹の恐怖に震えながら、僕は目の前に広がる大自然の神秘に圧倒されていた。そのときのオーロラは決して忘れることはないだろう。彼はなかなか屈託のなくてエエ奴だ。

エンジニアの人(1)

EISCATレーダー観測は、実験を目的とした研究者(僕らはこれに当たる)と現地のエンジニアがいて、はじめて行われる。エンジニアは、僕ら同様、観測中は常に待機している。彼等の一人、若い兄ちゃんは、大抵ジャージで現れる。寡黙な感じで結構男前である。僕と気が合いそうだ。

観測中、夜中の3時頃、眠気を振払いキッチンへコーヒーをとりにいったときのことである。なにやら、クリスマスソングが聞こえてくる。さすが北欧の12月、どこもかしこもクリスマスな雰囲気である。よく聞いてみると、鼻歌も聞こえる。かなりノリノリな感じである。兄ちゃんだった。ラジカセ持ち込みだった。しかも、なにか作っている。五角形のクッキーみたいなものが見えた。しかし、クッキーと呼ぶには、あまりにも大きい。聞いてみると、「House.」!?なるほど、どうやらお菓子の家になるらしい。ノルウェーでは、伝統的にクリスマスにはお菓子の家を作るらしい。しかし、なぜこんな時間に?こんなところで?しかもひとりで?ノリノリで?いろいろな疑問が頭の中を駆け巡ったが、あえて聞くことはしなかった。きっといろいろあるのだろう。兄ちゃんはなかなか屈託のなくてエエ奴だ。

エンジニアの人(2)

エンジニアの一人に、眼鏡をかけたガタイのいいおっちゃんがいる。おっちゃんは、エンジニアの中では最も陽気で愛想のよい一人である。レーダーのビーコン(緊急サイレン)が鳴ったときは、必ず僕らの方を見て首をかしげながら微笑んでくれる。

あるとき僕はコーヒーを作っていた。少し濃いめにしようと思い、コーヒーを大さじに大盛りで1杯、2杯、3杯といれ、コーヒーメイカーにスイッチを入れようとした。そのとき、「Five!」と後ろから声がした。振り向くと、おっちゃんがにこやかな笑顔で、手を大きく広げて、僕に5本指をアピールしていた。僕は、そりゃ濃いんちゃうかなと思いながらも、僕はすぐさま、「Of course.」。さらにコーヒーを2杯入れてスイッチオン。おっちゃんは満足そうに、「Strong! Strong!」と言いながら、拳をにぎりボクサーのようなポーズをとっていた。そのコーヒーが濃すぎたことは、言うまでもない。おっちゃんはなかなか屈託のなくてエエ奴だ。

掃除のおばちゃん

レーダー敷地内には宿泊施設があり、今回はこの施設に3週間ほど滞在した。この施設には、週に2、3日くらいおばちゃんがきて掃除をしてくれる。おばちゃんはすごい人だ。僕らが必死にこすってもきれいにできないフライパンの焦げを、あっさりと落としてしまう。笑顔もとっても素敵だ。

おばちゃんは、ゴミもすぐに片付けてくれる。特に、空き缶やペットボトルなどは、キッチンにまとめて置いておくと、すぐに持っていかれてしまう、もとい、ちゃんと片付けてくれる。僕らは、環境保護のため空き缶やペットボトルのリサイクルだけは、きっちりと自分達の手で行っている[see岡田慶吾, 2004]。そのため、この施設に滞在しているときだけは、空き缶、ペットボトルはすぐに部屋へと持ち帰ることにしている。おばちゃんはなかなか屈託のなくてエエ奴だ。

現地で出会った印象的な人たち、また会いたいなあ。