太陽フレアで加速された粒子によって生成される中性子観測の重要性は、
既に 1951年に Biermann という人によって指摘されていました。
しかしながら、人類が太陽中性子の検出にはじめて成功したのは、
それから30年後の 1980年6月21日のことでした。これは、Solar Maximum
Mission と呼ばれる衛星に搭載されたガンマ線スペクトロメータという
検出器によって検出されました。
右の図が、その時の中性子検出を示したものです(Chupp et al., Astrophysical
Journal, 263, L95-L99, 1982より)。ガンマ線スペクトロメータは文字通り
ガンマ線を測定するための検出器ですが、中性子にも感度を有しています。
このイベントでは、最初ガンマ線検出器の計数率の増加から、中性子も
作られたのかもしれない、
と考えられましたが、その後の解析から、中性子も
検出されていた、という解釈になりました。
次に、太陽中性子が観測されたのが、1982年6月3日のことで、地上に置かれた
検出器で初めて太陽中性子が観測されました(Chupp et al., Astrophysical
Journal, 318, 913-925, 1987)。これは、スイスのユングフラウヨッホに
置かれた中性子モニターで受信されたもので、他の中性子モニターでも
太陽中性子による増加が確認されました。「太陽中性子の観測」のところでも
書きましたが、低いエネルギーの太陽中性子は大気中で大きく減衰するため
地上では観測されません。一方、中性子のエネルギーが高くなると、その頻度も
減少するため、大型検出器を搭載できない衛星では、高いエネルギーの中性子を
観測できません。その境目となるエネルギーが 100MeV (Mega electron volt;
メガ電子ボルト、電子ボルトはエネルギーの単位)です。