名古屋大学太陽地球環境研究所が、乗鞍で太陽中性子の
観測を始めたのは
1990年のことです。これが現在まで続いている宇宙線研究所乗鞍観測所
における太陽中性子観測の共同利用です。
最初に設置されたのは、上図左のように、太陽の方向に向いた面積1平方
メートルの太陽中性子望遠鏡で、太陽方向から来る中性子のエネルギーを
測定できるものでした。この検出器は設置後まもない1991年6月4日に
太陽中性子の観測に成功しました(Muraki et al., Astrophysical Journal
Letters, 400, L75-L78, 1992)。この太陽中性子観測の報告は、1982年6月3日に
次ぐ2番目の地上での太陽中性子観測の報告でした。1991年6月は、非常に
大規模な太陽フレアが6回も発生しましたが、1991年4月に CGRO
(Compton Gamma Ray Observatory:
http://cossc.gsfc.nasa.gov/docs/cgro/index.html)衛星が
打ち上げられたばかりであり、ちょうどいいタイミングでした。CGRO には
4種類のガンマ線検出器が搭載されていました。目的は、宇宙空間における
ガンマ線の観測でしたが、太陽フレアに伴うガンマ線の観測にも次々に
成功し、太陽表面における粒子加速に対する理解を深める上で大いに
役立ちました。上図右がその時に得られた信号を示します。上が
太陽中性子望遠鏡によるもので、下は、乗鞍にある別の検出器による
信号で、異なる二つの検出器から中性子が観測されたのでした。
乗鞍64平方メートル太陽中性子望遠鏡(左)と設置場所である南実験室の 1996年頃の外観(右)。
乗鞍では 1996年8月に64平方メートルの太陽中性子望遠鏡が建設され、 太陽中性子24時間観測網の中で最も面積の広い検出器としてその中心を にない、現在に至っています。この建設は、平成7年度概算要求補正予算に よるものです。