これまでの水探査

貢献の一つのテーマとして考えられるのが水資源探査である。 水探査を行う意義は、一つは宇宙開発であり、人類が生活したり活動したりする上で 必須なものであり、そして、電気分解することで宇宙船やローバーなどの エネルギー燃料となりうることである。もう一つは、科学的意義であり、 どうやって水が作りだされ、輸送されたのか?彗星・隕石や太陽風などが考えられている。 したがって、どこにどのくらいの量の水資源があるかは、実用的にも科学的にも重要である。

水資源探査を行う方法として、ライダー、赤外線分光、中性子分光がある。 中でも中性子分光は、降り注ぐ宇宙線と惑星表面の鉱物などとの衝突によって 2次的に発生し、水があると高速中性子が効率良く減速され、熱外中性子や熱中性子となるため、 高速中性子や熱外中性子の減少分を見ると水資源が推定できるというのが原理である。 他の方法と比べて、約1m程度の深さの情報が得られるなど、他の方法と相補的な 情報が得られる。

過去の月周回軌道衛星の中性子観測は1998年7月のNASAのLuna Prospector (LP)に搭載された 中性子分光計(Neutron Spectrometer: NS)で行われている。図 2.3に中性子 フラックスを示す。 空間分解能は、30 kmの月周回軌道で44–46 kmと粗いものの、北極・南極で 他と比べて中性子のフラックスが低いことが観測され、水によるものではないかと 考えられている。 その後、2009年6月に打ち上げられたLuinar Recconaissance Orbter (LRO)に搭載された LENDという中性子分光計でも追認されている。まだ掘削などを行うには空間分解能が不十分であり、 今後より高い空間分解能で観測することが求められている。

Figure 2.2: 中性子を用いた月の水資源探査(唐牛譲他、2008 遊星人 17 161より抜粋)
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Figure 2.3: Lunar Prospectorで観測された月の極域の水の証拠(Feldman et al. 1998, Science, Vol. 281, 1496の図8から抜粋)
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