LHCf実験・RHICf実験

RHICとLHCによる1014eVから1017eV領域での宇宙線シャワーモデルの検証

LHCf実験は、2009年から運転を開始した陽子衝突型加速器LHCの陽子衝突点(IP)の0度方向に小型カロリメーターを設置し、超前方へのガンマ線、中性子を測定する実験です。日本、イタリアを中心とする6カ国、30人あまりの国際共同実験で、名古屋大学がグループ全体を主導して実施しています。

LHC加速器とCERN ヨーロッパ原子核研究機構(CERN)とLHC加速器(大きな円)

実験の目的

高エネルギー宇宙線である陽子が大気に突入すると、窒素や酸素原子核と衝突してたくさんの粒子を発生させるカスケードシャワー(空気シャワー)を起こします。高エネルギー宇宙線の観測は、この空気シャワー中の粒子を観測しています。

 空気シャワー粒子は、陽子の進行方向(超前方)に放出された粒子からの寄与が大部分です。通常の高エネルギーコライダー実験では測定が行われない領域です。しかしながら宇宙線観測にはまさにこの領域での陽子反応の知識が問題となってきます。

 LHCでの7 TeV + 7 TeVの陽子陽子衝突は、1017eVの宇宙線の反応に相当します。これまでこのような超高エネルギー反応の実験データは存在せず、最高エネルギー宇宙線の問題や一次宇宙線組成の問題において、解釈の不定性となってきました。それをLHCで実測し、宇宙線物理学の大問題に決着をつけようというのがLHCf実験の目的です。

実験の概要

陽子・陽子衝突の概念図

LHCf実験では、アトラス検出器のあるビーム衝突点IP1から140 m離れた地点で、2本の陽子ビームパイプの隙間に2 cm角から4 cm角の小型のシャワーカロリメーターを設置します。この場所では、陽子陽子衝突から0度方向に放出された中性粒子を捕らえることができます。0度方向への粒子放出は莫大であるため、LHCのビーム強度を落として実験を行います。

Geant4によるLHCf検出器のシミュレーション

実験の歴史

LHCf実験は、LHC加速器が運転を開始した2009年末に最初のデータ取得に成功し、2016年までに様々な衝突条件のデータを取得しました。解析結果も順次公開しており、宇宙線と地球大気衝突の理解にむけたさらなる研究をすすめています。

  • 2009年11-12月 LHC最初の陽子陽子衝突で重心系900GeV衝突データの取得に成功
  • 2010年3-7月  重心系900GeV, 7TeV陽子陽子衝突データの取得に成功
  • 2013年1-2月  重心系5TeVの陽子鉛衝突データと2.76TeVの陽子陽子衝突データの取得に成功
  • 2015年6月  重心系13TeV陽子陽子衝突データの取得に成功
  • 2016年11月  重心系5TeVと8TeVの陽子鉛衝突データの取得に成功

今後の計画

LHCfグループでは現在2016年までに取得したデータの解析をすすめています。すでに数件の論文を発表し、宇宙線空気シャワーシミュレーションに用いられている反応モデルに強い制限を与えています。

特に今は世界最高エネルギーの13TeVデータの解析に注力しています。また、衝突データを共有するATLAS実験との共同解析も進め、新たな視点で粒子生成の理解に迫ろうとしています。

過去のデータとあわせた衝突エネルギー依存性の研究もすすめます。これによってLHCを超えるエネルギーの宇宙線現象の理解を深めます。また、米国RHIC加速器での低エネルギーからのデータの取得や、LHC加速器における軽原子核(酸素)衝突などの将来計画も検討しています。

RHICにおける重心系510GeV陽子陽子衝突実験(RHICf)が承認されており、2017年6月のデータ取得に向けた準備が進んでいます。LHCで利用した検出器を米国に輸送して実験を実施します。