MISSION 世界初観測手法 磁気圏の粒子加速の把握で未来の安心・安全な宇宙利用を目指す

PWINGとは?What’s PWING?

磁気圏の粒子の加速を把握し、安心・安全な宇宙利用を目指す

 地球周辺の宇宙空間のうち、特に地球半径の4倍付近を中心とした位置にある内部磁気圏。この内部磁気圏は、高エネルギーのプラズマで構成される放射線帯から、低エネルギーのプラズマで構成されるプラズマ圏まで、広いエネルギー範囲のプラズマ粒子(電子・イオン)が混在しています。電磁波動と相互作用しながら、粒子の加速・消失が起きている興味深い領域です。
 内部磁気圏では、地球磁場の勾配と曲率のために、プラズマ粒子が数十分から数時間の周期で地球周辺を経度方向に回りながら加速・消失していきます。
 このため、特定の経度のみに偏在する変動場を地球規模でグローバルに把握していくことが、粒子・電磁場変動の定量的な理解には必須になります。本研究では、この内部磁気圏におけるプラズマ粒子と電磁波動の変動過程をグローバルに把握するとともに、その変動機構を定量的に明らかにすることを目的としています。

 これまでの観測では、地球を周回するプラズマ粒子、また電磁波動のグローバルな分布が把握できていませんでした。
 そこで国際協力のもと、経度方向に地球を一周するように地上の観測点を8箇所開設し、地球周辺の宇宙空間で地球を周回しているプラズマ粒子の地球大気への降り込み・相互作用する電磁波動を観測し、プラズマ粒子や波動のグローバルな状況を24時間モニターすることを可能にします。
 この地上ネットワーク観測と、2016年度に打ち上がる我が国の新しいERG衛星による磁気圏の直接観測、モデリングを組み合わせて内部磁気圏における変動のメカニズムの定量的な評価が可能になります。
放射線帯粒子を含めた内部磁気圏の高エネルギープラズマは、人工衛星の内部帯電やメモリー反転、太陽電池パネルの劣化や通信障害などの機能障害を引き起こすことが知られています。また磁気圏で加速された放射線帯粒子は、宇宙飛行士の被ばくにも影響しています。
 本研究により得られる成果は、宇宙放射線環境の予測精度の向上に貢献するとともに、衛星機器の障害の予測や評価にも活用され、宇宙利用に役立てていきます。

*PWING: study of dynamical variation of Particles and Waves in the INner magnetosphere using Ground-based network observations

観測だよりObservation News

メンバーMembers

研究代表者

塩川和夫

名古屋大学 宇宙地球環境研究所 教授 塩川和夫
1990年東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻修士課程修了。 同年、名古屋大学太陽地球環境研究所(現・宇宙地球環境研究所)助手。1996-1997年ドイツ・マックスプランク研究所客員研究員、1999年名古屋大学助教授、2008年より現職。専門はオーロラや夜間大気光の光学観測・電磁場計測を通した地球周辺の宇宙空間の観測的研究。

研究分担者

大塚 雄一 名古屋大学 准教授 GNSS受信機網を使って電離圏電子密度マップを作成。またネットワークを介した観測点からのデータ収集も担当します。
大山 伸一郎 名古屋大学 講師 アラスカとフィンランドの観測点での総合観測を担当します。
西谷 望 名古屋大学 准教授 ロシアの観測点を主に担当。大型短波レーダーのデータを使って、プラズマ対流のグローバルなマップを作成します。
能勢 正仁 名古屋大学 准教授 カナダのKapuskasingとNainの観測点での総合観測を担当します。
三好 由純 名古屋大学 教授 ERG衛星のプロジェクトサイエンティスト。EMCCDカメラによる観測やグローバルモデルの開発、観測データベースの構築も行います。
尾崎 光紀 金沢大学 准教授 ループアンテナを開発して、0.1-10kHzのVLF/ELF帯の波動を観測します。
片岡 龍峰 国立極地研究所 准教授 高時間分解能のEMCCDカメラを使って高速のオーロラ変動を調べます。
関 華奈子 東京大学 教授 グローバルな波動と粒子の相互作用のモデルを開発して、観測と結合することにより、粒子加速を定量的に評価します。
田中 良昌 国立極地研究所 特任准教授 広ビームリオメータを開発して、宇宙から降ってくる高エネルギー電子を観測します。

連携研究者

篠原 育 ISAS/JAXA 准教授 ERG衛星のプロジェクトマネージャーです。衛星観測との連携を推進します。
長妻 努 情報通信研究機構 研究マネージャー 誘導磁力計を使って0.1-10HzのULF帯の波動を観測します。
坂野井 健 東北大学 准教授 カナダにおける光学観測を支援します。
土屋 史紀 東北大学 准教授 ロシア、カナダ、ノルウェーなどで標準電波を観測して、高エネルギー電子降り込みによる電離層のD層の変化を調べます。
尾花 由紀 九州大学 学術研究者 カナダの観測を支援します。また、磁力計のデータを使ってプラズマ圏の密度診断を行います。
鈴木 臣 愛知大学 教授 カナダの観測を支援します。また、高感度全天カメラのデータを使って超高層大気の波動を調べます。

特任教員

新堀 淳樹 名古屋大学 特任助教 世界各地のGNSS(全地球衛星測位システム)データを収集し、全電子数の水平二次元マップを作成することにより、電離圏・プラズマ圏のグローバルな変動を明らかにします。

研究員

Sandeep Kumar 名古屋大学 機関研究員 地上・衛星観測・モデルデータを活用した内部磁気圏の波動、粒子変動に関する研究を担当します。
高橋 直子 情報通信研究機構 研究員 ジオスペース環境変動のモデリング研究を担当します。                    

技術支援者

加藤 泰男 名古屋大学 技術補佐員 リオメータやVLFアンテナの製作を支援します。
濱口 佳之 名古屋大学 技術職員 誘導磁力計システムの製作やVLFアンテナデータの自動転送を支援します。
山本 優佳 名古屋大学 技術職員 高感度全天カメラ、VLFアンテナの製作やデータ収集ソフトウェアの開発、通信ネットワークを支援します。
足立 匠 名古屋大学 技術職員 機器の全体構成や時刻較正用GPS受信機の開発などを支援します。

ERG-地上連携観測チームメンバー(PWING研究協力者)


国内・国際研究集会/スクール


国際中間評価結果


実施方法Implementation Method

観測地点

本プロジェクトにて
観測地点を新たに設置

新たに8か所の観測地点で電磁波動と粒子の数値を同時に観測することで、グローバルな空間分布を把握することが可能になります。

●既存の観測地点
★新規の観測地点

ERG衛星の地上観測点上空通過状況(電通大・細川敬祐さん提供)

観測機器

  • 高感度全天カメラ
    高感度全天カメラ
    夜間大気光を通して超高層大気や電離圏プラズマの変動を撮像するためのカメラです。
  • ループアンテナ
    ループアンテナ
    0.1-10kHzのVLF帯電磁波動を高感度で観測することができます。
  • 誘導磁力計
    誘導磁力計
    0.1-10Hz付近のULF帯地磁気脈動を高感度・低ノイズで計測することができる磁力計です。
  • リオメータ
    リオメータ
    電波吸収を計測することにより、高エネルギー電子の降り込みを24時間モニターできる装置です。
  • EMCCDカメラ
    EMCCDカメラ
    高感度全天カメラよりも高速(10-100Hz)でオーロラの撮像観測を行うことができるカメラです (脈動オーロラ研究プロジェクトと共同で運用)。






データベース・解析ツール

研究成果論文

本研究の成果論文リストはこちらから閲覧できます。(PDFファイルPDFファイル

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