ESRサイトから脱出!〜2009年12月19日(金)〜
野澤悟徳
1 出発
北緯78.2度のロングイアビンでは、この時期終日真っ暗である。1日寝ていても違和感はない。1週間続いたESRのオペレーションがいよいよ残すところあと2晩になった、12月19日(金曜日)。今回の滞在では、天候が比較的良く、雪がほとんど積もっておらず、いつも難儀するサイトへの往復はいたって快適であった。昼間UNISで仕事をし、午後5時にUNIS玄関前からEISCATエンジニアのマーティンの車に便乗して、ESRサイトに向かう。マーティン曰く、「Snow
storm is coming」。え?どうやら、雪嵐が来ているらしい。すでにスピッツベルゲン島の南側は、暴風雪域に入ったとか。昔の怖い思い出がちらっとよぎる。しかし、観測を中止する理由にはならない。マーティンも、まあなんとかなるよ!と気楽な返事。雑談をしながら、ESRサイトへの山道を登る。車がたまに雪にハンドルを取られてふらつく。雪がけっこう積もってきている。週末は、鉱山(マイン7と呼ばれる)が閉まるから、山道の除雪が行われない。嫌な予感がする。(^_^;)「まあ、帰りは下りだから、楽だよ」、とマーティン。ESRサイトの近くにたどり着いたときには、すでに風が強くふいており、マインからESRサイトまでの道には、30
cm以上の積雪がある。風も強く、雪が流れる感じで、すでに視界も悪い。ときおり雪にハンドルが取られて車がふらつく。横は、崖である。。。I have a bad feeling about this.
2 観測開始したけど。。
ESR観測サイトにつき、いつもながら、観測準備を始める。横でマーティンが、あっちこっちに電話をかけている。どうやら、情報収集と、万が一のときの脱出の方法について算段しているようだ。頼もしい人だ。(^o^) ノルウェー語で話しているから、全然わからないけど。観測テストを行い、観測準備完了。すでに、風速は20 m/s近くになっている。ブリザードなみ。マーティン曰く、「ハリケーンだね」。そして、「大丈夫だ!なんとかなるよ。まあしばらく様子見だね。」。頼もしい人だ。(^o^)
午後6時になり、予定どおり観測を開始。横でマーティンは、また別のところに電話をしている。風速は、ときおり30 m/sを超えている。窓の外を見ると、雪が横に流れている。観測を開始して、数十分後、電話を切ったマーティン曰く、「麓からマイン7までの道が、雪で閉鎖された。さらに、ダンプが一台立ち往生したようだ。」(>_<)
3 待機
マーティンの話しは続く。「どうやら、観測を停止して、撤収の準備をした方が良い。心配するな!我々は、マイン7と特別の契約がある。マイン7から、町に戻る最後の車に同乗して帰ろう。ダンプの除雪車が先導してくれるから、楽勝だ! マイン7の人々は、雪でスタックしているトラックをどかす作業を現在している。それが終わるまで、待とう。連絡が来たらすぐ撤収だから、観測を停止して、すぐ行けるように準備しょう!」 ESR観測を停止し、荷物をまとめて、脱出準備完了。すでに、ESRサイトとマイン7をつなぐ道は、雪により閉鎖されている。マイン7までは、スノーモービルを使うとのこと。ライフルも携帯する。昔の嫌な思い出がふと頭をよぎる。。。
![]() |
![]() Longyearbyenの町。。。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
連絡を待つ間、マーティンといろいろ話す。彼は、スノーモービルを駆使して、スピッツベルゲン島をあっちこっち旅しているそうだ。シロクマともなんども遭遇しているとのこと。昨日スノーモービルで転倒して、右手首を負傷しているとのこと。サポーターで固定していて、かなり痛そう。談笑しながら、連絡を待つ。なかなか連絡が来ない。マーティン曰く。「よし、待っている間に、トラクターで道の除雪をしよう。電話がかかってきたら、携帯に連絡してくれ!」と行って、雪荒らしの中、除雪トラクターにのり、除雪作業を始めた。頼もしい人だ。(^o^) しばらくして、マイン7から電話がかかってきた。折り返し電話するから、待ってと答えて電話をきり、マーティンの携帯に電話する。が、繋がらない!おいおい、そういえば、ここは私の携帯も圏外だったな。(*o*) 雪嵐の中、外へでて、トラクターに乗っているマーティンを捕まえる。マーティンが、マイン7に連絡したところ、ようやく道が通行可能になったので、すぐ来いとのこと。いよいよ脱出だ!
4 脱出
すでに積雪ため、マインへの道はふさがれているので車は使えない。マイン7までは、スノーモービルの2人乗りで行く事になった。
![]() |
私は、マックが入ったリュックを背負っている。しっかり掴まれと言われて、スノーモービルは発進した。すぐに、眼鏡に雪がついて、視界が消える。ただただ、下をみて、手に力をいれて、スノーモービルを掴む。こりゃー大変だ。( ̄□ ̄;)!! 左右に揺れたり、上下に揺れたり、振り落とされそうになり、結構危ない。なんとか5分ぐらいで、マイン7に到着。でも、乗るべき車の位置がわからない。暴風雪のため、2
m先も見れない。マーティンは、探してくるから、降りて待てと言う。おいおい、ここで一人にするんかい。マーティンはスノーモービルに乗って、すぐ視界から消える。眼鏡が雪のため使えず、視界はほぼ1 mか。シロクマが出てきたらアウトだね。(>_<)
![]() |
やれやれ、スリリングな展開だ。しばらくして、マーティンが戻ってきた。また、後部座席に乗る。少し移動して、「おーここだ!」とマーティンが言う。雪をかき分けて、ようやく車までたどり着く。やった\(≧▽≦)丿バンを見つけて、乗り込む。やれやれ、助かったぜ。すでに雪まみれ。靴の中にも雪が入っている。眼鏡を拭く物がないので、視界はほぼゼロ。。。
5 危機
同乗者は、マイン7の男性(チーフと呼ぼう)と、マーティン。前に、ダンプ除雪車が見える。いよいよ下山。マーティンは笑顔である。「もう楽勝だ!早く町に戻って、パブに行くぜ〜〜」「Great!」と私。車はのろのろと出発した。視界は、1
mもないか。ボヤっと、ダンプの後尾灯が見える。車はのろのろ進んだ。数分後、止った。。。え?嫌な予感。アクセルを吹かしても、タイヤは空回りして、車が動かない。雪でスタックしたようだ。前方のダンプにライトを点滅させて知らせる。しかし、ダンプは気づかず行ってしまった。(>_<)
暴風雪のなか、チーフとマーティンは車から降りて、脱出の策を巡らす。マーティンが車を押してみてもだめ。動かない。。。時間だけが経過していく。。。どうする?![]()
![]() |
外は、真っ暗で、強風の上、大雪。眼鏡に一瞬で雪がつき、視界を失う。もし歩いていくとか言われた、どうしよう?車の中で、待っていた方がいいよな。絶対そう言うぞ!と心の中で決める。しばらくして、前方に明かりが見えた。ダンプ除雪車が戻ってきた。さっそく、ダンプの運転手を含めて、相談を始めた。3人で力を併せていろいろ試してみるが、車は動かない。(>_<) マーティンが車に戻ってきた。「道具を持ちに、チーフがいったんオフィスに戻る」とか。ダンプが去っていった。「こういことはしょっちゅうさ。No problem (^o^) 」と言って励ましてくれる。運転席には、ダンプ除雪車の運転手のおじさん。でかい。身長190 cmはありそう。マーティンがさらに続ける。「この人は、こういう生活を30年もやってきたんだ。だから、No problem」。マーティン良い奴やね。(^o^)
20分は経過しただろうか、除雪ダンプが戻ってきた。再び、私以外の3人が暴風雪の中、外で作業を始めた。ゴトゴト音がする。どうやらチェーンを付けているようだ。そして、ダンプのおじさんが運転席に座り、エンジンをかけて、アクセルを踏む。後ろから、マーティンとチーフが車を押しているようだ。ごとごとごと。ついに、車が動いた!ふーやれやれ。「どうだ、楽勝だったろう!?(^o^)」と雪まみれになって、車に戻ってきた、マーティンが言う。いよいよ下山開始! ただ、さすがのマーティンにも疲れが見える。
出発したが、どの方向に行けばいいのか、わからない。 \(≧▽≦)丿なんせ、崖から転落の恐れがあるので怖い。視界は、1mもない。。。またもや、マーティン!車が出て、道を調べている。たまに、車から姿が見えなくなるぐらい離れる。大丈夫かな?無事戻ってきて、進路を指示する。ようやく動き出して、しばらく行くと、ダンプの後尾灯が確認できた!もう、スーパーマーティンと呼ぶしかない!ふー、これで安心か。
視界は、いまだきかない。フロントガラスはすぐ雪がつもり、溶けた雪がすぐ凍り、さらに視界を遮る。。再び、スーパーマーティンの出番だ!窓をあけ、暴風雪の中、頭を外に出して、進路を探す。「右だ! 左だ! 直進!」と指示を出す!暴風雪の中、偉い!スーパーマーティン!\(≧▽≦)丿
6 帰還
車は徐行しながら坂を下る。右に回り、左に大きく回り、右に回った。徐行しながら進む。前方のダンプの後尾灯がときたま視界から消えて不安になるが、なんとか追尾している。「あと1つだ!楽勝!」とスーパーマーティン。元気な人だ。(^o^) そして、最後のカーブを曲がった。ふーー、やれやれ、なんとか生きて帰れそうだ。(^_^)v 未だ視界が悪いが、山から降りたため、数メートル先まで視界が伸びている。車のスピードがあがる。あーー、よかった。ようやく町に戻り、UNIS前に到着。そこから、EISCAT車に乗り換えて、アパートに無事帰還。やれやれ。えらいめに遭った。しばらく、ロングイアビンには来るのは遠慮しようと心で誓う。
![]() |
![]() |
7 オスロにて
2日後、ロングイアビンをたち、オスロに到着。そこで1泊。夜レストランで他の同行者(O博士とS博士)と楽しくディナー。終わってみたら、なかなか有意義で、かつ、スリリングな滞在であった。思わず、「オーケー。次回の遠征が楽しみだね〜〜ロングイアビンは、スリリングで楽しいところだ!次回が楽しみだ!」。我ながら、立ち直りが早い。
8 おまけ
レストランから帰るときに、O博士と記念撮影! え?なに、この真ん中の人。これって悪魔?こいつが、今回の遭難(未遂)事件を。。。。
![]() |
*たんなる酔っぱらいのおじさんでした。ノルウェーパブ/レストランは、禁煙なので、喫煙のため、外に出る。そこで、偶然「参加」したみたいね。ノルウェーはいいところだ!次は、2月のトロムソ遠征だな。
9 旅の思い出
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
Back to Down the White-Bear Hole
![]()