概念設計をもとにさらなる詳細設計を行った。特にシンチレータの検出部を除いた限られ たスペースに信号処理システムを配置することから、信号処理基板のサイズは適切か?セ ンサ全体が本当に組み立てられるのか?といったところまで検討する必要がある。そのた め、センサ全体のモックアップ(構造モデル)を作り、組み立てられるのか?を検討してか ら基板製作過程へ移ることへと方針変更した(構造モデル組み立ての内容については5セ ンサ組み立てを参照)。当初は小型なので比較的簡単にできるという思い込みもあったが、 それは間違いで小さいために高密になり、逆に難易度が上がることを再認識した。その難 しさに加えて、昨今の半導体部品不足の影響を受け、主要部品であるプログラミング可能 なデジタルデバイスFPGAなどの入手困難なものが生じ、入手ルートや代替部品検討などで 詳細設計・製作に大幅な遅れが生じた。さらに2022年6月、JAXAから革新的技術実証衛星4 号機の公募が発表され、その中で本センサ単独のコンポーネントの衛星相乗り打ち上げお よび宇宙実証機会が無償で得られる可能性がでてきたため、我々としてもその可能性を拡 げるため、急遽JAXA要求の衛星システムインターフェースに適合する概念設計を行った。 これらのプロセスを経て、ASICとFPGAを搭載したフロントエンド(FEC)回路基板(2種類1セ ット:図3)、センサ宛コマンドを処理し、センサ全信号を最終的に統合するデータ処理(DP) 基板、個々の基板へ電源を供給し、衛星システムとのインターフェースを行う電源・デル タ機能基板と、計4種類の電子回路基板を製作した(図4)。製作するまでには回路設計・基 板設計・基板製造・部品入手・実装という様々な工程があり、電子回路に知識をもつ名大 技術職員の協力のもと、国内・外の基板製造メーカを利用しながら設計・製作を行った。