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研究所について

ご挨拶

 科学と社会の急激な発展の結果、私たちの人類活動は宇宙空間にまで拡大するとともに、地球環境にも大きな影響を与えています。こうした急激な発展のなかで、我々の環境を宇宙と地球の関係という大きな視点から捉え直す必要があるのではないでしょうか。名古屋大学の宇宙地球環境研究所(ISEE)は、未来を見つめるそうした視点のもとに、分野を超えた研究者の連携によって2015年に創設された研究所です。このために本研究所は、地球・太陽・宇宙を一つのシステムとして捉え、そこに生起する多様な現象のメカニズムと相互作用の解明を通して、地球環境問題の解決と宇宙に広がる人類社会の発展に貢献することをミッションとしています。また、宇宙科学と地球科学を結びつける唯一の全国共同利用・共同研究拠点としての役割を持ち、様々な共同研究を国内外の研究者と共に推進しています。

 私たちの生きている環境は多様な要素の相互作用から成り立ち、常に変化しています。地球上の生命を育む太陽活動の変化は、時に大きな影響を地球環境と社会に与えます。太陽面で発生する巨大な太陽フレア爆発は、地球の放射線環境や超高層大気を激しく乱し、衛星・電力・通信・航空などのインフラに大きな障害を与える場合があります。長期的な太陽活動の変化が地球気候に影響を与える可能性も指摘されています。宇宙の彼方から届く宇宙線も我々の環境の一要素ですが、樹木年輪等に残されたその痕跡は過去の環境を探る貴重な情報を我々に与えてくれます。一方、地球規模の気候変動や社会に大きな被害を与える極端気象現象のメカニズムを、太陽放射が駆動する地球のエネルギーの収支と物質循環の観点から理解することはとても重要です。そのためには温室効果のみならずエアロゾルと雲と降水がもたらす水循環、陸域海洋生態系と環境の相互作用などを解明する必要があります。

 こうした宇宙・太陽・地球・生命・社会が織りなす複雑でダイナミックな環境を包括的な視点から探るには、分野を超えた融合研究が必要です。宇宙地球環境研究所では国内及び国外の多様な研究者と協力した分野融合研究を積極的に進め、新たな学問分野を開拓する役割を果たしています。未来を切り拓く宇宙地球環境研究所の活動に、多くの皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。

宇宙地球環境研究所長 塩川 和夫