暗黒物質直接探索実験XENON1Tが電子散乱事象の超過を観測

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[2020-06-19]

名古屋大学の伊藤好孝教授(宇宙地球環境研究所ISEE・素粒子宇宙起源研究所KMI)、山下雅樹特任准教授(ISEE)、風間慎吾YLC特任助教(KMI・高等研究院IAR)が参加する、米国・ヨーロッパ・日本を中心とした国際共同実験グループ XENON コラボレーション1)は、暗黒物質直接探索実験において世界最高感度を持つ XENON1T 実験で得られた観測データに、これまで予想していなかった過剰な事象が見つかったと発表しました。 過剰な事象の原因についてはまだ完全には解明されていませんが、自然に存在する水素の放射性同位体であるトリチウムが極僅かに検出器中に含まれていた可能性、未知の素粒子である太陽アクシオンの可能性、または、これまで知られていなかったニュートリノの性質による可能性があります。XENON1T 実験は、次期計画のXENONnT 実験へのアップグレードを行っており、今回発表された事象超過の原因をXENONnT 実験で明らかにできると期待されます。

本研究成果は、XENON コラボレーションが日本時間 6月17日 (水) 午後11時 (中央ヨーロッパ夏時間:17日 午後4時) に研究者向けに行ったオンラインセミナーで公表されました。

XENONコラボレーションによるプレスリリース(英語)

東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構によるプレスリリース

名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構によるプレスリリース

 

発表雑誌
論文タイトル:Observation of Excess Electron-Recoil Events in XENON1T
著者: XENON Collaboration
プレプリント https://arxiv.org/abs/2006.09721

註1)
XENONコラボレーションは、米国・ヨーロッパ・日本を中心とした10カ国28機関の163人の研究者から構成され、日本からは、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) 、東京大学宇宙線研究所、名古屋大学、神戸大学が参加しています。

図) XENON1T Time Projection Chamber を下からみたところ。底部の白い PTFE の 保持構造の間に見えているのは光電子増倍管の後部である。光電子増倍管はチェンバー内 部で生じる事象によって発生するシンチレーション光を捉える。円筒部には電場を発生する銅のリングが配置されており、事象によって生じる電離電子をチェンバーの上部までドリフトさせる。 (写真提供:XENON Collaboration)

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