ライダー用コンテナを設置せよ!〜2009年10月〜
野澤悟徳
極域の下部熱圏・中間圏における大気温度変動現象の解明を進めるため、ナトリウム温度ライダーの開発を現在進めている。ナトリウム温度ライダーは、この高度領域の大気温度を測定することができ、我々が進めている磁気圏−電離圏−熱圏結合過程の研究推進に大きく貢献すると期待している。設置場所は、北欧のEISCATトロムソ観測所。当初は、建物を間借りして設置しようかなと甘い考えを持っていた。しかし、いろいろ計画を練るにつれて、より多くのスペースが必要であることが分かってきた。特に送信レーザーと受信機は別の部屋が必要である。さらに、制御コンピューターも別の部屋に設置するのが望ましい。これらを踏まえて、トロムソ大共同研究者や国内共同研究者などど議論した結果、改造輸送用冷凍コンテナを用いることにした。コンテナサイズは、2.4 m(横)×6.1m(長さ)×2.6m(高さ)である。
2 コンテナハウス
輸送用冷凍コンテナハウスを、そのままの現地で用いるわけにはいかない。我々の研究目的にあう特別コンテナが必要である。例えば、屋根にドームやレーザー射出窓が必要である。レーザー発振部を入れるコンテナは、より安定度が必要である。コンテナハウス業者を探したところ、名古屋港に事務所をもつTM社を見つけた。そこを訪問し、いろいろ相談した。これはなかなかいい。話が発展して、所長は海運業に詳しく、トロムソまでの船便について、熱く語ってくれた。名古屋港は、日本第一の貿易量を誇る優良港で、ヨーロッパに向けて、週一で定期の舟便があるとか。たとえば、アムステルダムまでだと、だいたい1月程度かかるそうだ。そこからトロムソまでもう1月だそうだ。
購入・納品されたコンテナハウスをそのまま現地に送るわけにはいかない。ライダーシステムを設置するためには、いろいろ整備が必要である。これらの作業は、優秀な技術職員さん(川端さん、ありがとうございます)が行ってくれる。暑い夏にコンテナを名古屋大学に設置した。作業効率を考えるとアクセスが大事で、近いところを物色した結果、ちょうど我々の建物の裏に空き地があり、そこを借地することに成功した。建物の裏手にあり、道がコの字になっているため、輸送用トラックやクレーンが設置場所まで入って来れるのか不安であった。コンテナ納品の日(6月23日))、不安であった。
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杞憂でした。業者さんが優秀で、手慣れた感じで、設置は順調に終了しました。 3つコンテナを設置した後に、レーザー射出窓(別名鉄仮面)をレーザー用コンテナの屋根に設置しました。
「これを設置すると、コンテナがスターウォーズバトルシップになります。」(設計者談)。すばらしい。だが、飛ぶわけではない。
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4 トロムソへ
トロムソは、だいたい10月ぐらいに初雪があり、中旬から雪がつもり、11月ぐらいからほとんど暗くなり、5月ごろまで雪が残る。そのため、コンテナ設置は、9月までに行わないといけない。しかしいろいろ手続きに手間取り、遅れてしまった。コンテナが現地に配達されるのは、10月1日ごろ。まあまあ設置ぎりぎりだが、なんとかセーフかな。遠征日程もそれに合わせて組む。メンバーは、キャプテン川端と参謀津田と私。ところが、コンテナが予定より2週間も早く現地に到着することになり、出張日程を再調整した。その結果、9月25日成田発で、同日現地に入った。野澤は1週前にプエルトリコから帰ったばっかり。この前は、東(時差マイナス13時間)、今回は、西(時差マイナス7時間)。コンテナは、ナルビクにて待機。コンテナ3兄弟、名古屋港から赤道を越えて、オスロ港に着き、そこから鉄道で、ナルビクまで送られたようだ。
5 トロムソにて〜9月29日〜
チーム川端は、9月26日にEISCATサイト入りし、コンテナの配達、設置等に関して、トロムオソ大学の共同研究者および配達業者等と、いろいろ最終調整を行った。その結果、9月29日にコンテナが配達され、プレビルディング前の敷地に仮置きし、別の日に正しく設置することにることになった。当日、到着時間予定の11時から待機。。。天気は、雨。。。 そしてトラック2台がやってきた。
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でかい。。。こちらの心配を他所にどんどんと作業を進めていく。コンテナ2台を一緒に運んできたトラックからどうやって降ろすのかと思ってみていると、簡易クレーンがついている方に移して、2台まとめておろすとは!2台で重量の合計は、13-14トン。。。。
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無事降ろした後、2つのコンテナがくっついているので、コンテナからの荷物の取り出しは最終設置まで 無理かなとあきらめていた。しかし、ビヨルナーとクヌートがやってくれた! フロントローダーで引っ張った!最初は普通に引っ張ろうとしたが失敗。やはり無理か。しかし彼らはあきらめない。なんとフロントローダで軽く持ち上げて動かす作戦にでた。そして、すごい、動いたよ。7トンコンテナが、ズルズルと動いた。。。
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6 トロムソにて〜9月30日〜
天気は、雨/雪が降ったり、止んだり。午前中は雪模様であったが、午後は回復基調。まず、コンテナAとコンテナBから、荷物の搬出作業を開始。取り出したものを、ガレージに運ぶ。昼休憩を挟んで、コンテナCのレーザー窓の取り付け準備作業を始める。まずは、コンテナの雪下ろしから。。屋根が凍結気味でかなりすべる。キャプテンと参謀が屋根に上り、雪下ろし。そしていよいよ、コンテナCの屋根設置の準備作業。輸送用に設定した屋根を奇麗にのぞき、連結面についたウレタンを奇麗に掃除した。雨/雪に備えて、コンテナをブルーシートで覆って完了。次に、ガレージに保管してあるレーザー窓の梱包をはずす作業を開始。このレーザー窓、通称「鉄仮面」。この鉄仮面に、つり上げ用のガイドの設置位置は決め、取り出しやすいように、回りの梱包木材を切る。これがなかなかの重労働。梱包が非常にしっかりしている。しすぎや〜〜 釘を抜いたり、木材をのこぎりで切ったり、悪戦苦闘の2時間。なんとか鉄仮面が取り出せる状態になった。ふー。これで準備完了。
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7 トロムソにて〜10月1日〜
朝、思いのほか天気が良い。クレーントラックは12時ごろ到着予定。準備作業として、コンテナBとCの扉の掃除を行う。長い旅で、かなり汚れが付着している。キャプテンは手慣れた作業で掃除をしていく。普段のお風呂掃除の成果をいかんなく発揮か?
11時20分ごろ、トロムソ大のChris Hall教授とビヨルナーが来てくれた。そして待つ事、30分、ついに来た。クレーントラック!!しばし打ち合わせの後、作業開始。コンテナを仮設置してあるところで、まずはトラックに積み、最終設置場所にまで少し移動して、コンテナを設置する。奥から詰めることになり、まずは、コンテナAを移動。これは、中身はすでに出してあるので、比較的軽い。作業場所にもゆとりがあり、楽勝。続いて、コンテナBを設置。2つのコンテナの距離を正確に測定して、無事設置。そして、最も重い(7トンン)の設置を始める。クレーンの安定のための足をのばすの場所が十分とれないような感じだが、彼らに迷いはない!きりきりのスペースでもどんどん作業を進める。驚くべきことに、7トンのコンテナをつって、向きが違うので、空中で回転させている!おそるべし、ノルウェー人。〜心配性の日本人の及ぶところではない。このコンテナは、コンテナBのよこにぴったりつけて設置する。途中から、クヌートも駆けつけ、いろいろ助けてくれる。危険をかえりみず、コンテナの4隅に人がつき、誘導して無事着地。(日本人はしりごみしていた。参謀はなにをしている!) 最大の難関を越えたあと、もう1つの作業がある。そう、鉄仮面の設置。この設置は場合によっては、一番の難関かもしれない。コンテナ屋根の指定の位置に、正しく載せないといけない。さらに、載せる直前に、シリコンを詰める。なかなか精度のいる作業である。その場にいる、すべての人間が設置に参加!着地寸前に、2cm下げて!1cm上げて!と、キャプテンの指令が飛ぶ。そして、無事完了!すばらしい。We made it!
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8 おわりに
いやー、どうなることか思ったけど、なんとかなりました。名古屋大学に設置、名古屋大学から搬出、そしてトロムソに設置。どれをとっても経験無しの作業で、不安であったが、無事終了。多くの人の協力のたまもの。ありがとうございます。コンテナがトロムソに設置でき、1つハードルを越えました。まずは、コンテナハウスの室内を整備し、来たる2月のレーザー設置に備えます。 いやーチーム川端がんばりました。だか戦いはまだまだつづく。
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コンテナ作業のすべてはここ!