宇宙線研究室(CR研)について

宇宙線は英語でCosmic Raysと呼ばれ、宇宙線研究室の略称であるCR研は、その頭文字をとっています。

宇宙線とは

宇宙線は、宇宙から地球に飛来する陽子を始めとする高エネルギーの素粒子で、1912年にVictor Hessにより発見されました。宇宙線は、天然の素粒子実験施設として数々の新粒子の発見をもたらし、素粒子物理学の黎明期を牽引しました。また、ニュートリノやガンマ線など宇宙線の観測による天文学は、宇宙線の故郷である宇宙の高エネルギー現象に関する情報をもたらします。さらに、電荷を持ち磁場に左右される宇宙線は、太陽と地球周辺の磁場環境を調べる手段にもなります。宇宙線の研究は、素粒子物理、宇宙物理、地球物理にまたがる幅の広い領域にまたがる広い領域が交差する学問です。CR研には様々な興味を持つ学生、研究者が、宇宙線研究の持つ多様なトピックに取り組んでいます。

宇宙線研究室での研究

CR研では、フェルミ・ガンマ線衛星やチェレンコフ望遠鏡アレイ(Cherenkov Telescope Array、CTA)実験による宇宙ガンマ線の観測、また世界7箇所の高山に設置した太陽中性子観測網により、宇宙線の起源と宇宙プラズマに普遍的な粒子加速のメカニズムの解明を進めています。宇宙線はまた、地上の実験では到達できない超高エネルギーの現象や未知の素粒子についてヒントを与えてくれる、天然の素粒子実験場です。宇宙線研究部では、超高エネルギー宇宙線が大気原子核と衝突して起こす原子核反応を検証するため、LHCやRHICなどの衝突型加速器を用いたLHCf実験、RHICf実験を行い、宇宙線の空気シャワー現象の解明を進めています。また、岐阜県神岡の地下においてスーパーカミオカンデによるニュートリノの研究や、液体キセノンを用いた暗黒物質の探索など、宇宙と素粒子にまたがる謎にも挑んでいます。宇宙線は地球大気に突入して電離を起こし、さらに原子核反応により放射性炭素14などの宇宙線生成核を作り出しながら、そのエネルギーを地表まで持ち込みます。年輪や氷床コアに残された宇宙線生成核を調べることで、過去に行った突発的な宇宙線増加現象や、太陽や地球の磁場変動史の解明を行っています。加えて、ニュージーランドに1.8 m専用広視野望遠鏡を設置して、重力マイクロレンズ現象の観測から太陽系外惑星や暗天体の探索も行うとともに、広い視野を生かした重力波発生天体やガンマ線バーストの対応天体の探索も行っています。

宇宙線研究室の歴史

CR研のルーツとなる名古屋大学宇宙線研究室の歴史は古く、1946年に理化学研究所から物理教室に赴任した関戸弥太郎が開いた旧H研にさかのぼります。関戸は宇宙線源を見つけるべく、宇宙線の到来方向を観測する宇宙線望遠鏡を建設し、1959年に理学部付属宇宙線望遠鏡研究施設を開きました。宇宙線望遠鏡3号が設置されていた大きなドーム屋根の建屋が、東山キャンパスの高台の一画に残っています。1990年に宇宙線望遠鏡施設は、当時豊川キャンパスにあった空電研究所と合併し太陽地球環境研究所となりました。さらに2015年には地球水循環研究センター、年代測定研究センターと合併して宇宙地球環境研究所となり今日に至っています。また、物理教室の宇宙物理、素粒子物理研究者と連携して、素粒子宇宙起源研究機構での宇宙素粒子物理学の研究を担っています。

CR研は、60年以上にわたる歴史の上に、素粒子から宇宙、地球まで多様な研究が交流する自由な雰囲気の研究室として、視野の広い研究者を輩出しています。また、自分で検出器を作って自分で動かす、ハードウエア、ソフトウエア両面に強い学生を生み出すことを方針に、卒業生は様々な企業での研究開発においても活躍しています。CERN(スイス)、マックスプランク研究所(ドイツ)、スタンフォード大学(アメリカ)、ブルックヘブン研究所(アメリカ)、マウントジョン天文台(ニュージーランド)、メキシコ自治大学(メキシコ)など、たくさんの海外研究拠点を持ち、国際的視野を持って研究しています。