完新世中期に宇宙線大増加の痕跡を発見
-太陽活動の異常を示唆-

HOMEお知らせ  »  2017年 › 完新世中期に宇宙線大増加の痕跡を発見
-太陽活動の異常を示唆-

[2017-01-19]

 当研究所の三宅 芙沙(みやけ ふさ)特任助教、増田 公明(ますだ きみあき)准教授および中村 俊夫(なかむら としお)名誉教授の研究グループは、アリゾナ大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校との共同研究により、紀元前5480年頃の地球上において放射性炭素(炭素14)濃度が急増していることを発見しました。
 過去の宇宙線強度や太陽活動は、樹木年輪に含まれる炭素14濃度を用いて調べられますが、完新世(約1万年前から現在)においては、10年分解能以下の細かい変動についてほとんど調べられていませんでした。今回米国産の樹木サンプルを用いて紀元前5480年付近の炭素14濃度を詳細に調査したところ、完新世最大クラスの炭素14濃度増加を検出しました。太陽黒点がほとんど消失したとされるマウンダー極小期のような太陽活動極小期にも、炭素14濃度の大幅な増加が見られます。しかし、今回見つかったイベントの原因は、通常の太陽活動極小期よりもさらに太陽活動が弱まっていた状態であったか、あるいは大規模な太陽面爆発が数年にわたって発生した状態と考えられます。いずれにおいても、完新世中期における太陽活動の異常が示唆されます。


image002.png

測定に使用した米国産木材サンプル(Bristlecone pine)


image004.png

今回見つかった紀元前5480年イベントと西暦775年宇宙線イベントとの比較。
紀元前5480年イベントの放射性炭素濃度の増加は、完新世最大クラスである。


【論文】 

<論文タイトル>
A large 14C excursion in 5480 BC indicates an abnormal sun in the Mid Holocene

<著者名>
Fusa Miyake, A.J. Timothy Jull, Irina P. Panyushkina, Lukas Wacker, Matthew Salzer, Christopher H. Baisan, Todd Lange, Richard Cruz, Kimiaki Masuda, and Toshio Nakamura

<雑誌名>
Proceedings of the National Academy of Sciences

<URL>
http://www.pnas.org/content/early/2017/01/17/1613144114

一覧に戻る

ページトップへ▲