太陽中性子観測機器の開発 Development of Solar Neutron Detector
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宇宙に専用の太陽中性子検出器がない状況を打開するため、軽量小型、かつ、エネルギー測定可能な 新型中性子検出器を新規に開発・製作し、次期太陽極大期である2024年を目標に名古屋大学が中心となり、 小型衛星での打ち上げを目指す。そして、すでに2009年から2018年まで国際宇宙ステーション(ISS)上で 実験していた中性子観測装置 SEDA-AP FIBの観測に続き、宇宙からの太陽中性子観測分野を日本から開拓していく。 ChubuSat-2搭載機器よりも高性能化を目指し、専用の低消費電力集積回路(ASIC)を用いて、1)常時12 Wという 大きな消費電力の4 Wまでの大幅削減と2)中性子エネルギー分解能(〜20 %)への改善を狙う。 小型・軽量・高性能な中性子観測装置を2023年までにフライトモデルとして完成させる。
今回開発する中性子検出器は、実績のあるSEDA-AP FIBの構造をベースに、
プラスチックシンチレータの角棒を積層して弾性散乱による反跳陽子の飛跡を捉える原理である。
中性子が太陽方向から来ていると仮定し、検出器で得られた反跳角とエネルギー損失から
中性子の入射エネルギーを決定する。しかし、SEDA-AP FIBでは、光センサとしてマルチアノード光電子増倍管
を使っていたため、スペースをとるとともに重量が増加した。今回は性能進展が著しい、
低バイアス動作・高量子効率の新規半導体光センサMPPCを用いて軽量小型化を実現し、
超小型衛星への搭載を可能にする。すでに我々は同原理の小型検出器をわずか1年半という
開発期間で作り、ChubuSat-2衛星へ搭載した実績をもつ。さらに我々は、機能強化のため、
水素の中性子捕獲ライン(2.2 MeV)の検出を狙うべく、GAGG(Ce)シンチレータを
下部に置くことを検討している。これにより、中性子(20 MeV-120 MeV)と
ガンマ線(100 keV-3 MeV)を同時に観測できる装置の構築を目指す。