領域代表挨拶

草野領域代表挨拶


領域代表 草野完也
名古屋大学宇宙地球環境研究所
副所長・教授

 人類が宇宙へ進出してから半世紀以上が経過し、今やその探査領域は太陽系全体に広がりました。また、情報化社会が急速に進化し、我々の生活は様々なかたちで高度な情報システムと宇宙技術に強く結びついています。その結果、太陽と宇宙空間の変動が地球の環境や人間社会にも多様な影響を与えることが分かってきました。
 1859年に英国の天文学者キャリントンが発見した強力な太陽面爆発(キャリントン・フレア)と、それに起因した巨大磁気嵐(キャリントン・イベント)に匹敵する大規模な太陽地球圏環境変動が、もし現代社会を襲った場合、電力、衛星、航空、通信ネットワークなどは前例の無い致命的な打撃を全地球的に受けると考えられています。さらに、最新の恒星観測や樹木年輪の解析によって、これを大きく上回る現象が起きる可能性も指摘されています。しかし、太陽面爆発の発生機構とその影響に関する詳細なメカニズムは未だ十分に解明されていません。そのため、現代社会は、将来起き得る巨大な太陽面爆発に起因した激烈な宇宙環境変動に対して潜在的なリスクを抱えています。また、太陽地球圏環境変動の原因となる太陽黒点活動は約11年の周期で活発化しますが、現在の太陽周期(サイクル24)は、過去100 年間で最も黒点数が少ない特異な周期となりつつあります。太陽活動が地球の気象・気候に影響を与えることを示唆する多くのデータがありますが、その原因は未だに解明されていません。そのため、気候変動予測における太陽活動の評価には依然として大きな不確定性が残っています。
 以上の背景より、我々が生きる太陽地球圏環境を正確に理解すると同時にその変動を正しく予測することは、科学的にも社会的にも重要かつ緊急性の高い課題であることが分かります。新学術領域研究「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成」はそうした認識の上に、様々な研究者の危機感と強い意志に基づいて企画提案された研究プロジェクトです。
 本領域では、我が国が世界に誇る最新の観測システムと先進的な物理モデルの融合によって太陽地球圏環境の変動を探る分野横断研究を展開し、科学研究と予測研究の相乗的な発展を推し進めると共に、宇宙天気予報を社会基盤にまで高めることを目的としています。  本領域研究では国内外の関連研究者との幅広い協力のもと、太陽地球圏環境の予測を通した新たな学術を発展させることにより、真に科学と社会に貢献できる優れた成果を生み出したいと考えています。多くの皆様のご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

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