大規模な太陽フレアから日本の電力網を守るための地磁気誘導電流(GIC)計算モデルを構築

太陽フレアなどに伴って大規模な地磁気擾乱が発生すると、発電施設や送電網に地磁気誘導電流(GIC: Geomagnetically Induced Current)が生じます。1989年にカナダ南部、2003年にスウェーデンにおいて、強い地磁気擾乱に伴うGICにより変圧器が破壊され、大規模な停電が発生しました。高緯度域の国々は地磁気擾乱の影響が大きいため、こうした停電災害への対応やGICへの予測研究が進んでいます。一方、日本のような低緯度域ではGICへの調査が進んでいません。しかし、非常に大規模な太陽フレアが発生した場合、日本のような低緯度域でもGICが大きな影響を与えることが危惧されます。このため、本領域のA03 地球電磁気班では日本の電力網にGICが及ぼす影響を評価及び予測するための研究を進めています。その一環として、今回、京都大学生存圏研究所の中村紗都子研究員と海老原祐輔准教授の研究グループは、国内500kV送電網における現実的なGICを計算で求めることができるモデルを初めて構築しました。このモデルにより、日本の高電圧網にかかるGICが増強しやすい地域や条件を特定することができます。現代社会は電力網に強く依存しており、大規模停電は非常に大きな社会的リスクです。本研究は、日本の電力網を守るための第一歩として期待されています。今後、上記の社会的リスクを評価して、適切な対策・情報提供を行う防災システム構築を目指します。
なお、この研究については2017年10月15日に地球電磁気・地球惑星圏学会にて報道発表されました。

本研究に関する問い合わせ先
京都大学生存圏研究所
中村紗都子
satoko_nakamura@rish.kyoto-u.ac.jp
0774-38-3883

◆報道発表資料