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地球から流出し月に到達した酸素の直接観測に成功

2017-02-01

 当研究所の西野 真木(にしの まさき)特任助教は、大阪大学、JAXAとの共同研究により、月周回衛星「かぐや」のプラズマ観測データを用い、地球の重力圏から流出した酸素が38 万 km離れた月に到達していることの直接観測に成功しました。
 本研究チームは、月面上空100kmのプラズマデータを解析し、月と「かぐや」がプラズマシートを横切る場合にのみ、高エネルギーの酸素イオン(O+)が現れることを発見しました(図2のスペクトルの赤線部分 約104 count/cm2/secに相当)。これまで、地球の極域より酸素イオンが宇宙空間に漏れ出ていることは知られていましたが、本研究では「地球風」として、38万km離れた月面まで運ばれていることを、世界で初めて観測的に明らかにしました。特筆すべきは、検出したO+イオンが1-10 keVという高いエネルギーをもっていたことです。このようなエネルギーの酸素イオンは、金属粒子の深さ数10ナノメートルまで貫入することが可能です。このことは、長年の謎である月表土の複雑な酸素同位体組成を理解するにあたり非常に重要な知見となりました。

 

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図1:太陽と地球磁気圏と月の位置関係の概念図(黄道面から見たところ)

 

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図2:「かぐや」が観測した酸素イオンのエネルギースペクトル。プラズマシート通過時に、103-104eVの有意な酸素イオンを観測。

 

【論文】

<論文タイトル>
Biogenic oxygen from Earth transported to the Moon by a wind of magnetospheric ions

<著者名>
Kentaro Terada, Shoichiro Yokota, Yoshifumi Saito, Naritoshi Kitamura, Kazushi Asamura, Masaki N. Nishino

<雑誌名>
Nature Astronomy

 <URL>
http://www.nature.com/articles/s41550-016-0026