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IPS観測によるデータ同化型宇宙天気予報モデルを開発

2019-06-27

太陽では大小様々な爆発現象が発生し、太陽大気の一部が「コロナ質量放出(CME)」として宇宙空間に向けて放出されます。CMEは地球に到来すると地球周辺環境に擾乱をもたらすため、CMEの到来を事前に予報することが重要です。名古屋大学宇宙地球環境研究所(ISEE)では独自の大型電波望遠鏡を用いた惑星間空間シンチレーション観測(IPS観測)から太陽風やCMEの観測を行っています。IPS観測では、太陽系外の天体を電波観測し、その観測中にCMEが天体と地球との間を横切ると、天体からの電波を散乱することからCMEを検出できます(図参照)。本研究では、日本の宇宙天気予報業務を担う情報通信研究機構(NICT)で開発が進められるCMEの予測モデルに、ISEEのIPS観測データを同化させることで、予報精度を高める開発研究を行いました。Fig1.png

 開発されたシステムでは、まず内部太陽圏モデルを用いてCME伝搬の数値シミュレーションを行います。そこで得られる内部太陽圏の3次元密度分布から擬似的なIPSデータが再現されます。この計算を複数のCME初期速度で行い、それぞれから得られる擬似IPSデータの中から、実際にISEEで観測されたIPSデータに最も近い結果を選択し、そのCMEの地球への到来時刻を予報値とします。2017年9月に発生したCMEに対して本シミュレーションを行った結果、実際のIPS観測に最も近い擬似IPSデータがCMEの地球への到来を最もよく予報できることが示唆されました。この結果は、IPSデータを用いることでCMEの予報精度を向上させることが可能であることを意味します。このシステムの一部はNICTの予報システム内に実装され、実際の予報に利用する試みも始まっています。

 

図 IPS観測によってCMEの接近を検出する模式図。観測対象である電波天体と地球との間にCME前面に形成される高密度領域が通過すると、天体からの電波が強く散乱されることを図示している。

・発表論文

“Development of a coronal mass ejection arrival time forecasting system using interplanetary scintillation observations”

Kazumasa Iwai, Daikou Shiota, Munetoshi Tokumaru, Ken’ichi Fujiki, Mitsue Den, Yûki Kubo,

Earth, Planets and Space, 71,39, 2019, https://doi.org/10.1186/s40623-019-1019-5

・本件に関する問い合わせ先

名古屋大学 宇宙地球環境研究所 太陽圏研究部

岩井一正 准教授

/~k.iwai/