太陽嵐の予測で世界最高水準を達成
2021-01-18
太陽で起きる爆発現象によって生じる太陽嵐は、地球の周辺環境に擾乱をもたらすため、 その到来を事前に予報することが重要です。名古屋大学宇宙地球環境研究所(ISEE)では独自の大型電波望遠鏡を 用いた惑星間空間シンチレーション観測(IPS観測)から太陽嵐の観測を行っています。 太陽圏研究部の岩井一正准教授らを中心とした本研究所と情報通信研究機構(NICT)の合同研究チームは、このIPS観測データを磁気流体シミュレーションに同化させた太陽嵐の予測システムの開発研究を行いました(図1)。
このシステムを用いて太陽嵐の予測実験を行った結果、本研究所のIPSデータを同化することで、モデルの精度が向上することが実証され、従来の予報で用いられてきた予測モデルに比べると2倍近い精度であることがわかりました。これは、現在世界で開発されている太陽嵐の予測モデルの中で最高水準です。宇宙天気予報を行っているNICTでは本研究所のIPSデータを用いた予測が始まっており、本システムを用いることで今後の太陽嵐予測の精度向上が期待されます(図2)。
本研究所では、太陽嵐を観測する大型電波望遠鏡の次世代機の開発計画を進めています。今回の成果は、建設に向けた弾みになること期待されます。
図1 電波観測を用いて太陽嵐を検出し、そのデータを用いたコンピュータシミュレーションで予測を行う模式図
図2 予測システムによる平均的な太陽嵐の到来予測時刻の誤差。緑:従来使われていたモデル。青・黒:新しく開発されたモデル(IPSデータ同化無し)。赤:新しく開発されたモデル(IPSデータ同化あり)。
発表論文
“Validation of coronal mass ejection arrival-time forecasts by magnetohydrodynamic simulations based on interplanetary scintillation observations”
Kazumasa Iwai, Daikou Shiota, Munetoshi Tokumaru, Ken’ichi Fujiki, Mitsue Den, Yûki Kubo,
Earth, Planets and Space, 73, 9, 2021, https://doi.org/10.1186/s40623-020-01345-5
本件に関する問い合わせ先
名古屋大学 宇宙地球環境研究所 太陽圏研究部
岩井一正 准教授
/~k.iwai/