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コロナガス噴出現象に伴う銀河宇宙線の双方向流を検出

2022-12-01

信州大学・宗像一起特任教授らの研究グループは、宇宙地球環境研究所と共同で宇宙線ミューオンの検出器を世界各地に展開し(Global Muon Detector Network: GMDN)、全球的なネットワーク観測を実施しています。この観測からは、太陽活動によって生じる銀河宇宙線の変動を詳細に解析することが可能であり、飛翔体観測からは知ることが困難な惑星間空間における大規模な磁場構造を明らかにできます。宗像教授らの研究グループは、2021年11月に発生したコロナガス噴出現象に伴う銀河宇宙線の変動を解析したところ、磁力線に沿って互いに反対方向を向いた宇宙線の流れがあることをつきとめました(図1参照)。この双方向流はコロナから噴出した磁気ロープと呼ばれる磁場構造によって宇宙線が閉じ込められたため生じたものと考えられます(図2参照)。磁気ロープは地磁気嵐の要因の一つであることから、解析精度を高めることで宇宙天気予報の改善につながると期待されます。

発表論文
K. Munakata, M. Kozai, C. Kato, Y. Hayashi, R. Kataoka, A. Kadokura, M. Tokumaru, R. R. S. Mendonça, E. Echer, A. Dal Lago, M. Rockenbach, N. J. Schuch, J. V. Bageston, C. R. Braga, H. K. Al Jassar, M. M. Sharma, M. L. Duldig, J. E. Humble, I. Sabbah, P. Evenson, P.-S. Mangeard, T. Kuwabara, D. Ruffolo, A. Sáiz, W. Mitthumsiri, W. Nuntiyakul, and J. Kóta, “Large-amplitude Bidirectional Anisotropy of Cosmic-Ray Intensity Observed with Worldwide Networks of Ground-based Neutron Monitors and Muon Detectors in 2021 November”, Astrophysical Journal, 938:30 (11pp), https://doi.org/10.3847/1538-4357/ac91c5

図1: 2021年11月4日18:30-21:30UTにおける宇宙線異方性の強度マップ、図中、左, 中央, 右はそれぞれ1次(n=1)、2次(n=2)、1次と2次の合計(n=1 and 2)の異方性を示す。図中の●と〇は磁場に平行及び反平行の方向を示し、×は宇宙線強度が最大の方向を示している。黒線は磁気赤道面である。 (Munakata et al., 2022より引用)
図2: 磁気ロープ中の宇宙線の双方向流の模式図(丸橋克英「2-4太陽磁気ロープ」通総研季報Vol.48No.3,2002年9月の図7を改変)