年代測定研究部
地球環境の近未来予測とその対策が、人類共通の緊急課題となっています。近未来の環境変動をシミュレーションするためには、その出発点となる境界条件の推定が決定的な意味をもち、それらを過去の環境事象やそれを決定した要因の解析によって明らかにすることが必須となります。そのために、過去の事象の時間変化を捕えること、すなわち年代測定が重要な意味を持ちます。
年代測定研究部門は、タンデトロン加速器質量分析装置とCHIME(Chemical U-Th Total Pb Isochron Method)法を用い、「時間軸」をキーワードとして、46億年にわたる地球史のあらゆるイベントから考古資料、文化財資料や近現代の文物までを対象とした研究を行っています。このように幅広い時間軸を対象とした年代測定を行い、幅広い学際的な共同利用と共同研究を推進していることが、年代測定研究部門の特徴です。そして、次世代研究者の育成を目指して、大学院環境学研究科地球環境科学専攻の協力講座「地球史学講座」に参加するとともに、年代学や年代測定に関する各種の啓蒙活動を実践しています。また、理学部地球惑星科学科の講義、実習にも貢献しています。
タンデトロン加速器質量分析装置を用いた研究では、 14C年代測定法によって約5万年前から現在に至るまでの地球環境変動や人類文化史についての研究を行うとともに、10Beなどより半減期の長い核種を用いた新年代測定法の開発を推進する予定です。また、活断層や火山の活動周期を、より細密な年代測定によって解析する研究や14C濃度の時空変動の解析から近未来の地球環境予測に関する研究も進めています。
CHIME法は、年代測定研究部門の前身である名古屋大学年代測定総合研究センターにおいて世界に先がけて開発・実用化された、EPMA (Electron Probe MicroAnalyser) を利用した高い空間分解能を持つ新しい年代測定法です。そして、現在では数百万年から地球創成時までの長い地球史を詳しく研究するために、様々な岩石試料を対象として世界で広く利用されています。