menu

太陽圏研究部

「太陽と地球をシームレスにつなぐ太陽風、その謎を独自の観測から解明する」

太陽圏研究部のホームページ

太陽からは太陽風(Solar Wind)と呼ばれるプラズマが音速を超える速度(毎秒300-800km)で吹き出していて、地球は常にこの流れの中にいます。地球磁場がバリヤーの役目をするため地球大気は太陽風の直撃から守られていますが、太陽風の莫大なエネルギーの一部は様々な過程を経て地球表層近くまで進入します。このように、太陽風は太陽から地球へエネルギーを運ぶ重要な担い手です

heliospheric_01.jpg太陽と地球のつながり(図Credit: SOHO/LASCO/EIT NASA, ESA)

 

太陽風は、太陽活動とともに大きく変動します。時には、太陽面での爆発現象に伴って高速の太陽風が地球に到来し、地球周辺の宇宙空間や超高層大気に大きな擾乱が励起されることがあります。このように太陽活動によって大きく変化する宇宙環境は、宇宙天気(Space Weather)と呼ばれ、最近注目されるようになりました。それは、宇宙天気の擾乱によって人工衛星や無線通信、電力設備等に障害が発生するからです。宇宙天気の擾乱を精度よく予報するために、太陽風に関して正確な理解が不可欠になっています。

太陽圏の概略図太陽圏の概略図

太陽風は太陽系をすっぽりと包み込んで流れてゆき、恒星間空間ガスとぶつかります。太陽風が作る広大な空間を太陽圏(Heliosphere)と呼びます。目下、飛翔体による太陽圏境界域の探査が行われています。太陽圏の中には、激しく変動する太陽風によって複雑な磁場構造が形成され、その構造は遠い宇宙の彼方から飛来する銀河宇宙線の伝搬に大きな影響を与えます。言い換えると、太陽圏は銀河宇宙線から地球環境を守るバリヤーの役目を果たしているのです。このバリヤーの働きを理解する上でも太陽風に関する理解は欠かせません。

太陽風がどこからどの様にして生成され、周辺にどの様に拡がってゆくかについては未解明の謎です。太陽圏研究部では、独自の地上観測から太陽風の観測研究を行っています。太陽風は極めて希薄なため、地上から太陽風が放射する光や電波を捉えることはできません。しかし、遙か遠方の電波天体(クェーサーやパルサーなど)の電波が太陽風によって散乱される様子を観測することで、太陽風の速度や密度の情報を得ることができます。この方法は惑星間空間シンチレーション(Interplanetary Scintillation, IPS)観測と呼ばれます。太陽圏研究部では、国内3箇所に惑星間空間シンチレーション観測専用の大型電波望遠鏡を設置し、毎日、太陽風のデータを取得しています。この観測からは、太陽活動に伴って劇的に変化する太陽風の姿を3次元的に捉えることができます。これは飛翔体観測に優る大きな利点です。

 

富士観測所の電波望遠鏡富士観測所の電波望遠鏡
木曽観測施設の電波望遠鏡木曽観測施設の電波望遠鏡
豊川分室の電波望遠鏡豊川分室の電波望遠鏡