27. 恐竜の時代に宇宙線はあったの?
これは大変おもしろい質問ですね。過去10万年前までは、ベリリウム10という宇宙線が作った同位元素の量を調べればわかります。同位元素というのは、原子核の中の陽子の数が同じで、中性子の数が異なるものを指します。
南極やグリーンランドに出かけていって、ボーリングをして氷の柱を取り出します。その中には、過去の地球大気が泡となって取り込まれているのです。これを研究すれば、地球環境が過去10万年の間にどう変わったかがわかります。日本でも国立極地研究所が南極のドーム富士に出かけて行き、氷のボーリングをしています。氷の柱を溶かして、その中にあるベリリウム10の数を加速器質量分析器で調べます。
調べた結果、宇宙線の飛来した数は、過去1万年前と比べると、現在では10%程度減少していることがわかりました。これは地球磁場の変化を表すものとして注目されています。地磁気が0になれば、銀河宇宙線が大量に地球に降ってくるからです。
過去10万年間には、宇宙線の変動は2倍程度あったと考えられますが、それ以上は変動していないようです。またそれより古い時代は、隕石を調べるとわかります。その結果も、過去100万年間は宇宙線の変動はあっても2倍程度であったと考えられます。恐竜の住んでいた1億年前となると、そのときの宇宙線の量を調べる良い同位元素がありません。ベリリウム10も、150万年で崩壊して無くなってしまうからです。
発展編その2 まとめ
- 宇宙線には、太陽からの宇宙線と、銀河からの宇宙線がある。
- 太陽宇宙線は太陽の電場で加速される。
- 銀河宇宙線は、超新星爆発の時に作られたガスとの衝突で加速される。
- 宇宙線は電荷をもっているので、その生まれた場所の情報はなくなっている。
- しかし、近年ガンマ線天文学が宇宙線の生誕の地を明らかにしつつある。
- 銀河宇宙線の故郷は超新星残骸である。
- 宇宙線は他の惑星にもやってきている。
- 宇宙線の強度は過去10万年間は2倍以上は変動しなかった。