7. 成層圏のオゾンを発見したのはだれ?

今から約 120 年以上も前の 1881 年、アイルランドの化学者ハートレー(W. N. Hartley)は実験中に、オゾンが紫外線を吸収してしまうことを発見しました。当時、太陽から届くはずの紫外線が、地上にはないことを知っていたので、地上のどこかにオゾンがあるのではないかと、彼は考えました。

一方、1930 年頃、イギリスの物理学者チャップマン(S. Chapman)は、地球大気にある酸素分子から、オゾンが作られることを理論的に予想していました。ハートレーとチャップマンの考え方は、まったく別々のものでしたが、彼らの頭の中にあったものこそ、まさに成層圏に存在するオゾン層だったわけです。

オゾン層の予想をしたころのチャップマン(右端)。コペンハーゲン市内にて。

しかし、成層圏にオゾンがあるということが実際に確かめられたのは、1940 年代になり、ロケットを使った観測ができるようになってからです。

成層圏のオゾンが、どのくらいの高さで、どのくらい濃いか(薄いか)を調べたところ、チャップマンが予想したものとは少し違っていることも分かりました。当時は、この違いについては科学的な理由がはっきりとしていませんでしたが、その後の研究によって、オゾンよりももっと濃度の薄い物質が、高度分布を決めるのに強く作用していることが明らかにされました。また、人間が作り出したフロンガスなども、オゾン層に影響していることは、 皆さんご存知のとおりです。

ハートレーにしても、チャップマンにしても、彼らが研究をしていた時代には、将来になって、オゾンの研究が環境問題にも関わるなんて、思ってもいなかったでしょうね。

理論と観測結果が一致しない? チャップマンの理論で計算されたオゾンの高度分布と観測値。