暗黒物質とは?
暗黒物質とは宇宙の全エネルギー組成の約 27% を占める、質量は持つものの電磁波を放射しない何らかの粒子です。様々な観測結果からその存在が示唆されていますが、その粒子が実際にどのような粒子なのかは明らかになっておらず、まだ直接的な検出もされていません。
私たちの身の回りにある物は全て「通常の物質」で作られています。例えば人体は水素や炭素、酸素、窒素、カルシウムなどの原子が集まってできています。これらの物質は電磁相互作用、重力相互作用、弱い相互作用、強い相互作用という 4 つの異なる相互作用をします。このうち電磁相互作用は電磁波の放射に関係し、私たちの体の温度を赤外線カメラによって測定できるのは、私たちの体からも電磁波が常に放射されているからです。また通常の物質を私たちが感じることができるのは、太陽などからの光が物体表面で反射して私たちの目に届くからです。また物体を触った時に指先に得る感触は、原子と原子が押しあったときの電磁相互作用による反発を感じているためです。
「相互作用」とは、素粒子同士が互いに力を及ぼしあったり、影響を及ぼしあったりする仕組みのことです。例えば重力に引かれて物が地面に落ちるのは重力相互作用です。静電気で髪の毛が下敷きに吸い寄せられるのは電磁相互作用です。この他に弱い相互作用と強い相互作用があり、これら 2 つは身近な現象としては感じることはありません。しかし原子核の中に陽子や中性子がバラバラにならず結合しているのは、強い相互作用のおかげです。また弱い相互作用がないと、太陽内部で生じている核融合反応は起きません。
一方、暗黒物質は電磁相互作用をしません。「暗黒」とは、電磁相互作用をしないために、望遠鏡などの光を使った観測では直接的に見つけられないことを意味しています。しかし重力相互作用はするため、銀河の回転の仕方などに影響を与えます。この暗黒物質の検出とその粒子の性質を解き明かすことは、宇宙物理学の最重要課題の一つです。
宇宙線物理学研究室では、XENONnT などの暗黒物質直接検出実験、CTA やフェルミ衛星などのガンマ線による間接探索を進めています。