名古屋大学 宇宙地球環境研究所
宇宙線研究部(CR 研究室)

半導体光検出器を使ったCTA小口径望遠鏡の試作カメラによる試験観測が成功

CR 研究室の田島宏康教授と奥村曉講師らはチェレンコフ望遠鏡アレイ(Cherenkov Telescope Array、CTA)計画に参加しています。私たち宇宙地球環境研究所のガンマ線グループでは、 CTA 小口径望遠鏡用の焦点面カメラの開発にこれまで取り組み、図 1. に示す半導体光検出器 SiPM を使用した新たなカメラ試作機を 2018 年に海外共同研究機関とともに完成させました。

この試作カメラをイタリアのエトナ山にある CTA 小口径望遠鏡試作機(ASTRI-Horn 望遠鏡)に搭載して、2019 年 5 月と 6 月に超高エネルギー宇宙線の生成する大気チェレンコフ光の試験観測を行い、大気チェレンコフ光の撮影に成功しました。

CHEC-S
図 1. 小口径望遠鏡用の試作焦点面カメラ CHEC-S(画像提供:Christian Föhr、マックスプランク核物理学研究所)
ASTRI-Horn
図 2. ASTRI-Horn 望遠鏡試作機

図 3. は CHEC-S と呼ばれるこのカメラ試作機を使って撮影した大気チェレンコフ光の様子です。地球大気に入射した超高エネルギー宇宙線や超高エネルギーガンマ線が空気シャワーと呼ばれる二次粒子の生成を起こします。その中の荷電粒子が超光速で大気中を進むときに放射するチェレンコフ光を、10 億分の 1 秒ごとに夜空を動画撮影できる我々のカメラで撮影したものです。

CHEC-S で撮影した大気チェレンコフ光
図 3. CHEC-S で撮影した大気チェレンコフ光。左図は 1 ナノ秒(10 億分の 1 秒)ごとに撮影したチェレンコフ光の動画、右図は左図を時間積分したものです。直径 9 度の観測視野内で、大気チェレンコフ光が横切るのが分かります。

小口径望遠鏡は CTA によるガンマ線観測の 1 テラ電子ボルト(TeV)から 300 TeV のエネルギー範囲を担うように設計されています。この小口径望遠鏡を将来的に 70 台設置することで、銀河宇宙線の加速天体がどこにあるかという謎に超高エネルギーのガンマ線観測で迫ります。