大学院生の経済支援について
はじめに
日本で大学院へ進学するためには、ある程度の金銭的支出が必要です。大学に納付する入学料・授業料、また下宿先の家賃・光熱費、そして食費などを含めた普段の生活での支出です。名古屋大学周辺で一人暮らしをする場合には年間 200 万円程度が必要になります。原則としてこれら支出は学生本人の負担ですが、学部生に比べると、大学院ではより多くの経済的支援を受けられます。
CR 研究室では進学する大学院生にどのような経済的支援を提供できるのか、この記事にて全体像を説明します。本記事の情報は 2024 年 5 月の情報に基づきます。最新の情報や詳細な金額についてはお問い合わせください。
また、経済的負担から進学を断念することのないよう、CR 研ではできる限りの支援を検討しますので、ぜひ相談してみてください。
入学料・授業料の免除
学生の経済状況および学業成績により、入学料・授業料が免除される場合があるます。詳細は名古屋大学の経済支援(授業料等免除・奨学金)をご覧ください。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金
日本学生支援機構(JASSO)は、日本国内で学生支援を行う独立行政法人(国の機関)であり、第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(有利子)を大学院生に提供しています。「奨学金」と銘打っていますが、あくまでこれは貸与(借金)であるため、大学院課程修了後に返還義務が発生することに注意してください。
ただしこのうち第一種奨学金の受給者は、大学院での業績(学位論文の内容、投稿論文の有無など)が優秀な場合に、返還義務が全額免除もしくは半額免除になる場合があります。CR 研の卒業生でも、この免除制度の恩恵を受けた学生は複数いますので、ぜひ活用してください。業績が優秀であると認定されるには学生本人の努力がもちろん必要ですが、CR 研の教員は研究指導・論文指導を積極的に行います。
詳細は大学の提供する日本学生支援機構(JASSO)奨学金の説明を参照してください。
各種団体の奨学金
民間奨学財団や地方公共団体による奨学金が多数存在します。これら奨学金は給付型(返還義務なし)と貸与型(返還義務あり)の 2 種類が存在します。大学推薦や奨学金の一覧は大学で取りまとめていますので、民間奨学財団奨学金、地方公共団体奨学金を参照してください。
博士前期課程(修士課程)
ティーチング・アシスタント(TA)
ティーチング・アシスタント(TA)は大学の講義を手伝うアルバイトのことです。CR 研の教員は複数の学部講義を担当しており、このうち実験を伴う講義では主に修士学生を TA として雇用しています。
あくまでアルバイトのため、講義の実験補助、学部生の質問への対応などの労働が発生します。この労働に対して、修士学生であれば時給 1300 円(2022 年現在)、博士学生であれば 1500 円が支払われます。TA としての労働時間などは大学として上限が定められており、前期・後期でそれぞれ 86 時間(合計で年間 172 時間)が上限です。(※これら条件は雇用形態によって異なる場合があります。)
一般のアルバイトに対する利点は、移動時間がほとんどかからないこと、比較的時間の融通がきくこと、そして学部生に教える側に回るようになるため、物理学や実験装置に対する理解が学部時代よりも深まることです。
リサーチ・アシスタント(RA)
博士課程への進学を強く希望し、また一定以上の研究遂行能力があると認められた場合にはリサーチ・アシスタント(RA)として雇用する可能性があります。RA の給与は研究に対する対価であるため、自身の研究を進めることのみが期待されます。
RA の月額や採用可能かどうかは、学生本人の研究遂行能力や CR 研の教員が持つ研究財源の状況によって大きく変わってきますので、進学前もしくは進学後に指導教員とよく相談してください
博士後期課程
博士後期課程では、進学希望する学生の多くに最大で月額 20 万円程度の経済支援が可能です。
ティーチング・アシスタント(TA)
修士課程の TA と同様ですが、先述したように時給が 1500 円に上がります。
日本学術振興会特別研究員
分野を問わず幅広く博士課程学生を支援するために、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)が特別研究員制度というのを設けています。俗に「学振」「学振 DC」と呼ばれる制度です。毎年全国で 1800 人程度が採用されます。
学振 DC に採用されると月額 20 万円の研究奨励金が支給されます。これは返還義務のない給付型の奨学金です。また最大で 450 万円の研究費が支給されます。
学振 DC は修士 2 年次に申請し博士 1 年次から採用される DC1 と、博士 1 年次以降に申請して博士 2 年次以降に採用される DC2 の 2 種類があります。それぞれ最大 3 年間の支援を受けられます。
名古屋大学で博士後期課程に進学する学生は、ほとんどが学振 DC に申請すると考えてください。全国平均で倍率はおよそ 5 倍と決して広き門ではありませんが、修士課程での研究を早い時期からしっかり進めることで採用される可能性は大きく高まります。実際に、これまで CR 研でも多くの学振 DC 採用者が出ています。
詳細は特別研究員制度の案内を参照してください。
東海国立大学機構メイク・ニュー・スタンダード次世代研究事業
東海国立大学機構メイク・ニュー・スタンダード次世代研究事業は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「次世代研究者挑戦的研究プログラム」を利用して東海国立大学機構が提供する博士後期課程の支援制度です。目は「東海国立大学機構融合フロンティア次世代研究事業(融合フロンティア次世代リサーチャー)」で、月額 18 万円の研究専念支援金と年間 25 万円の研究費が支給されます。これも給付型のため返還義務はありません。
詳細は東海国立大学機構メイク・ニュー・スタンダード次世代研究事業の説明ページを参照してください。
学振 DC に採用されない場合でも、この支援事業によって多くの博士学生が経済支援を受けられることになります。(ただし今後の進学者増、申請者増によって状況が変化する可能性があります。)
創発的研究支援事業
CR 研では風間准教授の研究課題「極低放射能技術で解明する宇宙暗黒物質の謎」が科学技術振興機構の創発的研究支援事業に採択されています。この研究課題に取り組む大学院生は、リサーチ・アシスタントとして同事業で雇用することが可能です。詳細はお問い合わせください。
宇宙地球環境研究所のリサーチ・アシスタント
宇宙地球環境研究所(ISEE)としてリサーチ・アシスタント(RA)の雇用をしています。これは学振 DC や他の支援制度との重複受給はできません。この RA に採用された場合、時給 1500 円、年間最大 450 時間の雇用が可能です(2022 年現在)。
所得の扱いと雇用関係
学振 DC、フロンティア次世代研究事業、融合フロンティアフェローシップ事業からの支給金は研究経費を除いて所得扱いになります。そのため、若干ですが所得税と住民税が発生することに注意してください。RA や TA は名古屋大学との雇用関係で発生する給料ですので、同様に若干の税金が発生します。
前者は雇用関係のもとに発生する給与ではなく、また RA や TA も年間支給額が低いため、名古屋大学の社会保険ではなく国民健康保険に自分で加入する必要があります。もしこれまでご家族の扶養家族になっていて健康保険に入る必要がなかった場合でも、大学院での年間所得額によっては扶養家族を離れる必要がありますので、国保の支払額なども生活費を概算する上で考慮してください。
海外渡航支援
名古屋大学では各部局(研究科、研究所など)独自の取り組みとして大学院生の海外渡航支援を行っています。例えば国際会議への参加や、共同研究者との共同研究や実験遂行のために海外の研究機関に長期滞在するなど、大学院生が海外渡航するのに必要な航空券・宿泊費・滞在費を支給しています。
CR 研では 3 つの海外渡航支援が利用可能です。理学研究科に所属する大学院生が利用可能な支援、宇宙地球環境研究所(ISEE)が ISEE 所属の大学院生に対して実施する支援、また素粒子宇宙起源研究所(KMI)が KMI 所属の大学院生に対して実施する支援です。
CR 研の学生は理学研究科に所属していますが、研究室は ISEE や KMI に属しているため、これら 3 つの支援を同時に受けることができます。海外での研究に意欲のある学生に対して、CR 研ではこれら渡航支援を積極的に利用しています。