名古屋大学 宇宙地球環境研究所
宇宙線研究部(CR 研究室)

MOA 実験の紹介

  1. プロジェクト概要
  2. ニュース
  3. 重力マイクロレンズ効果
  4. サイエンス
  5. 観測機器
    1. 61 cm B&C telescopeおよびMOA-cam2
    2. 1.8 m MOA II telescopeおよびMOA-cam3
  6. 研究成果
  7. リンク

プロジェクト概要

MOAプロジェクトは、重力マイクロレンズ効果を利用し、通常は観測することができない暗い天体を観測し、宇宙の謎を解明することを目的とした日本・ニュージーランド共同プロジェクトです。暗い天体の候補としては、褐色矮星などのダークマター候補天体、太陽系外惑星、ブラックホールなどがあります。このプロジェクトは、1996年に開始し、ニュージーランド・マウントジョン天文台の61 cm反射望遠鏡と、MOA-cam1、 MOA-cam2と呼ばれる大型CCDカメラを使って観測を続けて来ました。その後、文部科学省・科学研究費補助金・特別推進研究が認められ、2004年12月に1.8 m新望遠鏡(MOA-II)が完成し、観測を開始しました。左の写真は、MOA-II望遠鏡のドーム(ニュージーランド・マウントジョン天文台)。

MOA望遠鏡
MOA望遠鏡
ニュージーランド
ニュージーランド

観測は、ニュージーランド南島のほぼ中央にあるテカポという湖のそばにある、マウントジョン天文台で行われています。ここは、南極以外では世界でもっとも南にある天文台で、南緯44度です。このため、大小マゼラン雲は、1年中沈むことはありません。また、ニュージーランドの冬(6月、7月)は、夜の時間が長く、14時間もの連続観測が可能で、銀河中心(いて座の方向)の連続観測が可能です。

参加機関は、日本からは、名古屋大学太陽地球環境研究所、長野高等専門学校、都立航空高等専門学校、京都産業大学、ニュージーランドからは、オークランド大学、マッシー大学、ビクトリア大学、カンタベリー大学です。

ニュース

重力マイクロレンズ効果

マイクロ重力レンズ効果の概念図
マイクロ重力レンズ効果の概念図

太陽や星、銀河など、大きな質量を持った天体の周りでは、その大きな重力によって空間が歪み、そこを通過する光は曲がって進むことが知られています。このことは、アインシュタインが一般相対性理論から予言したものであり、その後エディントンらによって、皆既日食中に太陽近傍の星がずれて見えることから、この理論の正しさが証明されました。

重力マイクロレンズ効果は、遠方の星(光源星と呼ぶ)の光が、前面を通過する星(レンズ天体)の重力レンズ効果で曲げられて集光され、一時的に明るく見える現象です。レンズ天体は、質量さえ持っていれば、それ自身が光を出さなくても、重力マイクロレンズ効果によって検出可能です。これを利用して、光をほとんど出さない暗い天体の存在を知ることができます。

サイエンス

この研究の目指すサイエンスは、銀河ハローに占める褐色矮星など通常の物質(バリオンと呼ばれる)の割合を決めること、太陽系外惑星の発見とその研究、ブラックホールや浮遊惑星などの存在の検証、などがあげられます。

  • ダークマター
  • 太陽系外惑星
  • ブラックホール・浮遊惑星

観測機器

この観測には、広視野の光学望遠鏡が使われています。

61 cm B&C telescopeおよびMOA-cam2

61 cm B&C望遠鏡
61 cm B&C望遠鏡

MOA-I(1996-2005)のマイクロレンズ探索の観測に使用されていた望遠鏡と大型CCDカメラ。今後は、CCDカメラを付け替え、追尾観測専用としての活躍が期待される。

1.8 m MOA II telescopeおよびMOA-cam3

1.8 m MOA望遠鏡
1.8 m MOA望遠鏡

マイクロレンズ事象は、非常に稀な事象です。だいたい100万個の星を観測すると、そのうち1個くらいがマイクロレンズによる増光が認められる程度だと言われています。より多くの星を観測して、多数のマイクロレンズ事象を発見するためには、大口径広視野の望遠鏡を使って多数の星を連続観測する必要があります。そのための予算を各方面にお願いしておりましたが、2002年に文部科学省・科学研究費補助金・特別推進研究が認められ、1.8 m望遠鏡をマウントジョン天文台に新設することになりました。マイクロレンズ事象の探索専用の望遠鏡としては、世界最大です。工事は順調に進み、2004年12月に望遠鏡は完成し、盛大に完成記念式典を行いました。

CCDカメラ
CCDカメラ

この望遠鏡は、特に広視野を得るために2000 × 4000ピクセルのCCDチップ(3 cm × 6 cm)を10枚使った大面積のCCDカメラ(MOA-cam3)が取り付けられています。暗い星を観測するために、量子効率の高いCCDを使用し、冷凍機で-80℃くらいまで冷却して使用します。8000万画素の超高感度デジカメというわけです。このCCDカメラは、ハワイのすばる望遠鏡の主焦点カメラに取り付けられているものとほぼ同じ大きさ・性能のもので、世界最大級のものです。この大面積CCDカメラの性能をフルに引き出すためには、主鏡の持つ収差を補正し、カメラのすみずみまでクリアな画像を得る必要があります。このために、4枚の補正レンズをカメラの前面に置き、収差を補正する様になっています。

研究成果

  • マイクロレンズ探索
  • 変光星
  • トランジット探索

リンク