名古屋大学 宇宙地球環境研究所
宇宙線研究部(CR 研究室)

CTAO 小口径望遠鏡のプロトタイプで試験観測を実施

CR 研究室は次世代の超高エネルギー宇宙ガンマ線観測装置である、チェレンコフ望遠鏡アレイ天文台(Cherenkov Telescoep Array Observatory)の装置開発と観測に参加しています。CTAO では大・中・小の異なる主鏡直径の望遠鏡を用いて広帯域のガンマ線を観測し、そのうち 5〜300 TeV のエネルギー帯域の観測を直径 4 m の小口径望遠鏡(Small-sized Telescope、SST)が担います。小口径望遠鏡の科学目標は、PeV 帯域まで銀河宇宙線を加速する未発見の天体「PeVatron(ペバトロン)」の発見です。

我々はこの小口径望遠鏡の焦点面カメラの開発に 10 年以上取り組んで来ました。2025 年 2 月に、このカメラの最終設計に近いプロトタイプの組み立てをドイツのマックスプランク核物理学研究所で共同研究者らと行いました(図 1.)。また 2025 年 7 月にはスペインのテネリフェ島にあるテイデ天文台にこの焦点面カメラを輸送し、同天文台に建設済みの小口径望遠鏡に取り付けました(図 2.、3.)。

7 月中に 1 週間程度の宇宙線空気シャワーの試験観測を行い、図 4. に示すように、高エネルギー宇宙線の起こす大気チェレンコフ光の放射や、望遠鏡近くを通過する宇宙線ミューオンの放射する特徴的なチェレンコフ光の像を検出することに成功しました。

小口径望遠鏡は現在 40 台規模の量産体制に入りつつあり、2026 年以降に CTAO の観測サイトであるチリのパラナルに順次建設され、2020 年代中に本格的な科学運用に入る見込みです。

図 1. マックスプランク核物理学研究所(ドイツ)で行なった小口径望遠鏡のプロトタイプ焦点面カメラの組み立てと統合試験。
図 2. テネリフェ島のテイデ天文台(スペイン)に設置された小口径望遠鏡にプロトタイプ焦点面カメラを設置したところ。
図 3. 小口径望遠鏡での試験観測に参加した共同研究者達(向かって左端が奥村)。
図 4. CTAO 小口径望遠鏡の試作機で検出した高エネルギー宇宙線(上図)とミューオン(下図)からのチェレンコフ放射。