30. ブラジル上空には宇宙放射線が集中している?

地磁気は、地球の内側でおきている複雑な発電作用(ダイナモと呼ばれます)で作られています。地磁気は赤道でもっとも弱く、極に行くほど強くなりますが、同じ緯度であっても、地磁気の強い場所や弱い場所があります。リオのカーニバルでも有名なブラジルの近くでは、現在、世界中で地磁気の強さが一番弱くなっていて、南大西洋磁気異常領域(またはブラジル磁気異常領域、地磁気ホール)と呼ばれています。この場所の磁場強度は、日本の磁場強度の約半分になっています。このように地磁気の弱い場所では、放射線帯の粒子を跳ね返す地磁気バリアの力も弱いので、たくさんの放射線帯の粒子が、他の場所よりも低い高度まで降り注いできています。

こうしてブラジル上空では、電離圏高度を飛んでいる人工衛星の半導体メモリーは、強い放射線帯粒子の影響を受けて誤作動することが多くなります。そのため、人工衛星がブラジル上空を通過するときには、放射線帯の粒子から計器を守るために電源を切ることもあるのです。

地磁気の強い場所や弱い場所の分布はゆっくりと変化しています。実際に、磁気異常領域の場所は、1年間に西方に0.28度、北方に0.08度ずつ動いています。また、過去数百年の記録によると地磁気の強さは地球規模で少しずつ弱くなっています。地磁気が全体的に弱まると宇宙放射線の量もそれだけ増えることになります。一方、地磁気が弱くなると、現在は極地方で輝いているオーロラが、遠い将来には日本のような低緯度でも見えるようになることも予想されています。