11.金星はなぜ厚い雲でおおわれているの?

金星の空は濃硫酸の厚い雲でおおわれています。この濃硫酸の雲は金星の空全体を切れ目なくおおっているので、金星の表面にはほとんど光がさしません。また、金星の大気は高温高圧で、表面での圧力はなんと90気圧にも達します。これは地球の海底900メートルでの圧力に相当する、とてつもなく高い圧力です。素もぐりの世界記録が100メートルそこそこですから、人間が金星で生活するには潜水服が必要になるのでしょうね。

一説によると、金星がこのような厚い雲と高温高圧の大気をもつようになったのは、温室効果が暴走したためと言われています。遠い昔には、金星は地球と同じような環境にあったと推測されていますが、太陽に近いために海が蒸発してしまい、水に溶けこんでいた二酸化炭素が大気中に放出されてしまいました。この二酸化炭素が温室効果を生んでさらに金星の表面温度が上がり、その結果、さらに海の蒸発と二酸化炭素の放出が起こり温室効果が進み・・・と、金星の大気の温度はどんどんと高くなってしまったと考えられています。今では、鉛も溶けてしまう400度以上の苛酷な世界がひろがっています。金星の表面は高温なため、黄鉄鉱などが二酸化炭素や水と反応して、大気中に亜硫酸ガスを増やします。この亜硫酸ガスが高度50~70キロメートルに厚い濃硫酸の雲をつくると考えられています。

濃硫酸の雲は太陽の光をよく反射するので、夜空で輝く星々の中でも金星はとくに明るく見え、「明けの明星」や「宵の明星」として親しまれています。

<濃硫酸>

硫酸、しかも濃いやつと聞けば、身の毛がよだつ人がいるでしょう。硫酸とは硫黄と酸素と水素が化合した、強い酸性を示す化合物です。

く黄鉄鉱>

硫黄と鉄からなる鉱物。金とよく間違われる風貌をしています。黄色は、温泉でお馴染みの硫黄の色。岩石や鉱床中に広く存在し、かつては硫酸の原料として使われていました。

く亜硫酸ガス>

硫黄を燃やす時に出るガスのことを言います。線香花火の煙の臭いはまさにこの亜硫酸ガスの臭い。鼻をさすような臭いがします。別名で二酸化硫黄とも言い、酸素や水と反応して硫酸になります。