12. 宇宙線には何が含まれているの?

ヘスが宇宙線を見つけた当初は、宇宙線の成分まではまだよく知られていませんでした。1945年以降になってようやく、地上に降ってくる宇宙線の中には、物質を透過するものと、吸収されやすいものが混在することがわかってきたのです。透過力の強いものは硬成分、弱いものは軟成分と分類されました。今日では、硬成分はミュー粒子、軟成分は電子であることが知られています。

1950年頃には、新しい粒子が宇宙線の中で続々と見つかってきました。宇宙線は1種類ではなく、たくさんの種類があることがわかってきたのです。

今日では、宇宙から飛来する宇宙線の主な成分は、陽子であることがわかっています。その他にも、ヘリウムの原子核や鉄の原子核、それに電子も含まれています。ごくわずかですが、ウラニウムの原子核やガンマ線もやってきます。共通する事実は、これらの宇宙線は非常に高いエネルギーを持っているということです。そして大気に突入すると、多くの子供の粒子を作ります。その一つがパイ中間子であり、またその崩壊したミュー粒子であり、電子であり、V粒子(次ページの註参照)なのです。

それらのうち、エネルギーの余ったものは地表に到達します。宇宙から直接やってくる粒子と区別して、大気中で作られる粒子は二次宇宙線と言われます。それに対して、宇宙からやってくる粒子は一次宇宙線と言われます。つまり、宇宙線の生成過程により、一次宇宙線、二次宇宙線の2種類に分類されます。

ここで原子核や新しい粒子という言葉がでてきましたので、次に原子核と素粒子について説明します。

【註】V粒子とは?

ロチェスターとバトラーが、1947年に霧箱の中で発見した不思議な2本の軌跡(図の1と2)。鉛の層(図の中央の黒い部分)で作られた中性粒子(飛跡がうつらない)が霧箱のガスの中で崩壊して、正の電荷をもったパイ中間子と、負の電荷をもったパイ中間子になったと考えられる。1と2の飛跡がV字形になっているので、V粒子と名付けられた。今日ではK粒子と呼ばれている。