4. どうして霧箱で宇宙線が見えるの?

まず、霧がどうやってできるのかを説明します。大気中には水蒸気が含まれていますが、水蒸気はいつも私たちの目に見えるわけではありません。しかし、だんだん気温が下がってくると窓に水滴が付くことから、空気中に水蒸気があることがわかります。19世紀、ロンドンの冬は霧が立ちこめることで有名でした。これは、各家庭で暖房のために燃やす石炭の粉塵(粉々の小さな粒状になったチリ)に水蒸気がくっついてだんだん大きくなり、気温が下がると霧になったわけです。

粉塵だけでなく、イオンも霧を作ることが知られています。イオンが粉塵にくっつき、そして成長していく場合もあります。イオンというのは、原子や分子が電荷をもった状態のことです。

原子や分子は通常は電気的に中性ですが、宇宙線が空気中を通過すると、空気の分子中の電子を切り離し、分子をイオン化してしまいます。分子はイオン化され、もはや中性ではなく、電気を帯びます。このイオンの周りに、他の分子が集まってきて、霧の水滴に成長していくのです。霧箱の場合、宇宙線が通過した後に作られたイオンが成長して水滴となり、それがつながって飛跡として見えたのです。